原口 人生初サヨナラ弾 延長十一回ひと振りで決めた!
「阪神5-4ヤクルト」(6日、京セラドーム大阪)
劇的な幕切れだった。同点の延長十一回、阪神・原口文仁捕手(25)が左越えに自身初となるサヨナラ1号ソロ。今季初の連勝で勝率を5割に戻し、3位タイに浮上。7日からは聖地・甲子園に宿敵・巨人を迎え撃つが、この勢いなら首位軍団もなぎ倒せる。
劇的なフィナーレの中心には、満面の笑みを浮かべる原口だ。歓喜のウオーターシャワーに身を委ね、喜びを爆発させる。「最高です」。人生初のサヨナラ本塁打。今季1号は、チームを救う忘れられない一発になった。
「前の回からも真っすぐが来ていましたし、振り負けないようにと思っていきました。皆さんのために必死のパッチで打ちました」
4-4の延長十一回無死。杉浦の高めに浮いた直球を見事に捉えた。打球は美しい放物線を描きながら、左翼スタンドへ着弾。「もう打った瞬間、自分の中でも完璧で最高でした!」。サヨナラのホームを踏むと、金本監督と力強く抱擁した。
1点を先制し、なお続く初回無死満塁の好機は、先発・館山の直球を捉えて右前適時打。開幕6戦で打率・429と好調を維持する。この日は一塁の守備でも好捕を見せるなど、攻守で躍動。背番号94のユニホームを着る「原口ファン」も、大きな拍手を送る-。
忘れられない宝物の一つが、埼玉県寄居町の実家に保管されている。小学生時代、西武ドームへ観戦に行った時にゲットしたファウルボール。投手が小野寺(西武)で、打者がサブロー(ロッテ)。昨年末、無我夢中で捕ったボールを見て、プロとなった自分を見つめ直した。
「真横に飛んできて、それがすごいうれしくてね。あの時の風景が忘れられないんですよ。今の子どもたちも、そんなふうに思っているんですかね~」
シンデレラストーリーを駆け抜けた昨季。めまぐるしく過ぎる毎日に、ふと立ち止まる日は少なかった。年末年始に実家へ帰省し、あの頃の記憶をたどった原口。ほんの少しでもいい。夢を与えたい。それが、プロ8年目を戦い抜く原動力だ。
「皆さん、遅くまでありがとうございました。明日につなげていきたいと思います」
チームは3勝3敗の5割とし、7日からの巨人3連戦(甲子園)へと向かう。「巨人戦に向けて、とにかくメンタル、気持ち、これだけを強く持ってやって欲しい」と金本監督。打線の中心には25歳の青年。今季初の聖地で、再び満開の笑顔を咲かせる。