上本「まさかビックリ」1号でG倒決めた!六回のバントミス挽回
「阪神4-3巨人」(9日、甲子園球場)
乾いた打球音が聖地に響いた。次第に大きくなっていく歓声に後押しされるように、高々と舞い上がった打球が左翼席へ飛び込んでいった。「まさかという感じでビックリした。何が起こったか分からなかった感じ」。決勝弾に沸く歓喜のシャワーが、阪神・上本の小さな体に降り注いだ。
3-3で迎えた八回。先頭で迎えた第4打席だった。カウント1-1から121キロのスライダーを振り抜くと、美しい放物線を描いて左翼フェンスギリギリに飛び込んだ。一時は宿敵に試合をひっくり返されても、北條の2ランで追いついた。二遊間を組む後輩から「神様みたいなやさしい先輩」と称された男が、続かないわけにはいかなかった。
故障に泣かされ続けたプロ8年間。レギュラーを確保しようとする矢先、アクシデントに襲われた。昨オフ、上本は球団に愛着のある背番号「4」からの変更を申し出た。
「ケガとかいろいろあったから。自分の中で何かを変えたかったんだと思う」と球団幹部は明かし、普段は物静かな男の決意を尊重したという。
六回無死一塁で迎えた第3打席は送りバントを失敗。ミスを引きずるどころか、次の打席で挽回してみせた。「チーム全体で失敗しても取り返そうと思ってやっている」。それを体現した精神的な強さ-。背番号「4」を背負っていた時のイメージはもうない。
金本監督も「引きずって内にこもって、どうしよう、どうしようというより、さっきのバントを取り返すというのを持って、これからもやってほしい」と目を細めた。お立ち台で甲子園の印象を聞かれた本人は「勝てば最高(の場所)です」と言った。
一つでも多くの白星をファンに届けるために-。確かな強さと、たくましさを感じさせるプレーヤーへ、「00」の背番号とともに上本は変わった。