虎の“新たな”支柱、サード鳥谷 新ポジションで安定した守備が打撃に好影響
独自の視点からプレーの深層に迫る「虎目線」。今回は阪神・鳥谷敬内野手(35)にフォーカスする。場面は6日・ヤクルト戦(京セラドーム)の五回、1死一塁。雄平の三塁線に高く弾んだ打球を、迷わず二塁で封殺した。何気ないプレーにも見えるが、安定した守備がチームに安心感を与える。打撃でもリーグトップの打率・467。攻守の“変化”に迫る。
開幕から8試合を消化した。4勝4敗で5割をキープ。チーム打率・276はリーグトップだ。新加入の糸井や若手の台頭が目立つ中、オフの間、各方面で頻繁に耳にした言葉を思い出す。「阪神は鳥谷のチームだから」と。昨季苦しんだ35歳が、開幕から元気だ。
玄人をうならせたプレーがある。4月6日のヤクルト戦。五回、1死一塁で雄平を迎えた場面だ。三塁線への高く弾んだ打球を捕球し、二塁に送球。迷いのない判断でピンチを未然に防いだ。
何げないプレーだが、投手を助ける大きなプレーだ。普通ならば高く弾んだ打球に対し、野手は何も考えずに一塁に投げがちだ。ただこれだと2死二塁となり、単打で得点を許すピンチとなる。鳥谷のように二塁へ送球してアウトにすれば2死一塁。投手が背負う状況は大きく変わる。
昨季も先発で15試合を守ったが、今季遊撃から三塁へ本格的にコンバートした鳥谷は、このプレーを「アウトにできるところで、アウトにするのが仕事なのでね」と平然と振り返った。開幕から19度の守備機会で失策は1。投手への声掛けなども含め、チームの精神的な支えになっている。久慈内野守備走塁コーチは「三塁・鳥谷」に強く期待する。
「居心地はよくないかもしれない。ただ、結果を残しているわけだし、今のチームにとってプラスだから。意気込みも伝わる。サードは難しい打球が飛ぶけど、レギュラーは結果を残すことが宿命」
守備の安定感が、打撃に与える好影響は測り知れない。開幕から8戦連続安打など、打率はリーグトップの・467だ。「守備と打撃は別で考えているけどね」。鳥谷は控え目に話すが、金本監督も「トリが頑張っている。打ち方も昨年とは全然違うよ」と状態のよさを認める。
具体的な打撃の違いは打席での立ち位置が半足分、昨年よりベースから離れているところ。「気にしてない」と言うが、今季30打数14安打のうち内角球に対しては7打数4安打。元々外角球には強く、広角に打ち分ける技術が戻ったことで、高打率を維持する。前カードで対戦した巨人のあるコーチも「三塁で落ちついているイメージ。今年は『よさそうだな』と感じるよ」と警戒した。
シーズンはまだ序盤だが、「超変革」を続けるチームにおいて、ベテランの存在は貴重だ。糸井とは同学年。平野打撃コーチは願う。「打撃は今の形が、しっくりきている感じがする。あいつが上位を打ってくれたら一番いい形。(背番号)1番と、7番が相乗効果で頑張ってくれたらね」。35歳コンビの活躍なくして、12年ぶりのリーグ優勝はない。