岩貞お待たせ1勝 初回、中谷美技に救われ3度目の正直!
「中日1-3阪神」(18日、ナゴヤドーム)
悪夢を振り払うように、必死に腕を振った。最速146キロの直球を軸に強気の投球が要所で光り、7回2/3を1失点。8安打されたが、最後まで逃げなかった。開幕から5失点、4失点の乱調から一転。中10日で挑んだカード初戦で、阪神・岩貞がようやく今季初勝利をつかんだ。
不安な立ち上がりをナインが鼓舞した。開幕から2試合は初回に3失点。この日も2死三塁を背負った。ビシエドの打球は右中間前方への飛球。これを今季初スタメンの中谷が、ダイビングキャッチでつかんだ。落ちれば先制点は確実。絶体絶命のピンチを救った。
「中谷に助けてもらいました。あのプレーで、『後ろにどんどん飛ばしていけば大丈夫だ』と思えた」。序盤を力で押すと、香田投手コーチが「彼らしいボールが戻ってきました」と振り返ったように、中盤以降は中日打線の空振りが増えた。
最大のピンチは2点リードの八回。連打で無死一、二塁だ。「3連打はなかなかない」。マウンドでつぶやくように、自分自身に言い聞かせた。打席の荒木はバントの構え。2球続けてファウルを奪うとカウント2-2から、スライダーで遊ゴロ併殺に。ここからマテオ-ドリスとつなぎ、背水登板で待望の初勝利だ。
昨年4月の熊本地震発生から1年が過ぎた。故郷は甚大な被害を受け、まだ仮設住宅で暮らす人がいる。3月には地元への「復興支援プラン」を発表。公式戦1勝につき10万円の義援金と、1奪三振につき軟式ボール1ダースを寄贈する。まずは第一歩となる1勝目を届けた。
「まだまだ厳しい状況が続く。風化させないというか、忘れることなく。僕ができるのは野球しかないので。一生懸命やっていきたい」。愛する故郷と同じように、何度でも立ち上がる。つまずいても苦しくても、復興のシンボルとして。昨季の10勝左腕が、ようやくスタートを切った。