虎の糸井だ 甲子園1号! 3連勝ならずも粘りの一撃でけん引
「阪神3-6中日」(29日、甲子園球場)
ついに飛び出した。阪神・糸井嘉男外野手(35)が甲子園で移籍後初本塁打。2点を追う初回、1死一塁から右中間席最前列へ4号同点2ランを放った。守備のミスなどで3連勝はならなかったが、1点を追う三回には再び追いつくなど、その一発で“粘りの攻撃”をけん引した。
糸井が、メモリアルな一発を右中間席最前列に放り込んだ。雨雲が上空を覆い、突風まで吹き荒れる甲子園。“超人的”なフルスイングで打球を運び、歓喜をいざなった。阪神に移籍後、聖地での初ホームランは自身もビックリの一発だった。
「打った瞬間、角度が上がり過ぎかなと思いましたが、スタンドまで届きました」
2点を先制され、迎えた初回1死一塁。フルカウントから、先発・バルデスの133キロ直球を狙い澄ましたように振り抜いた。4月5日・ヤクルト戦(京セラ)以来、18試合ぶりの4号2ラン。「風はあったかな」とは言うものの、オーバーフェンスの事実に変わりはない。大甲子園は歓喜に揺れた。
片岡打撃コーチも称賛する背番号7の類い希(まれ)な長打力。そんな背中を若虎たちは見つめ、必死に追いかけている。筋骨隆々な鋼の肉体、走攻守における球界屈指のプレーと尊敬する部分は数知れず。不断の努力で積み上げてきたものが、糸井を作り上げる。
オリックス在籍時から知る本屋敷トレーナーは「彼に対して『さすがだな』と思うところは、特に走塁ですね。塁に出ると、常に投手の隙を狙って次の塁を狙っている」と話す。試合前にスコアラー室にこもり、投手の癖を研究するのが日課だったオリックス時代。身近な“相棒”は、さらに進化していると分析する。
「昨年、盗塁王になったことが大きいのかもしれない。僕の知っている嘉男(糸井)ではないですね」
塁に出た後の表情が違うのだという。進塁を企てる鋭い眼光は、殺気すら感じさせる。不安を抱える右膝を考慮し、昨年のような“爆走”はできない。それでも他を威圧する圧倒的なオーラは、十分相手を苦しめている。
九回に3点を奪われ、敗戦を喫したこの日の試合後。背番号7は「次やるだけ」と次戦を見据えていた。頼りになる男がタイガースにはいる。目の覚めるような一撃でチームを勝利へ導いてくれる。