好調メッセ支えるスライダー 速度幅と曲がり幅の“谷間”埋める新球
防御率1・95で、ハーラートップの4勝をマークしているランディ・メッセンジャー投手(35)の好調の要因をひもとく。今季から新たに持ち球として加えた120キロ台のスライダー。カウント球、勝負球として使える1球を習得した理由は、速度幅と曲がり幅の“谷間”をなくすためだった。
登板後、メッセンジャーはよくこの言葉を口にする。「状態はあまり良くなかった」。手応えを口にしたのは14日の巨人戦だけ。それでも今季の成績は無傷の4連勝、防御率はチームトップの1・95。本調子でなくとも抜群の安定感を誇る要因は、持ち球として加えたある球種にある。
メッセンジャー「120キロ台のスライダーを今年から投げ始めた。配球のアクセントにもなるしね。それが今、いいように働いていると思うよ」
実際に4月28日の中日戦では、リーグ打率トップの大島に対しスライダーで楽にカウントを奪った。四回2死一、三塁の場面では堂上に対し、カウント1-2から128キロのスライダーで引っかけさせ、遊ゴロに仕留めてピンチを脱して見せた。
カウント球にも勝負球にもなり得る球種。スピードや曲がり幅など相手打者の右左によって3パターンを使い分けている。来日8年目、大黒柱として奮闘してきた助っ人右腕は、なぜスライダーを覚えようとしたのか。その理由をこう語る。
メッセンジャー「自分の球種が6マイル(約10キロ)ごとにあることで、打者とのタイミングを外しやすくなる。球速の幅を少なくすることで相手の目線も変えられる。投球の幅も広がった」
昨年まで配球の主体は直球とカットボール、スプリットの3種類。時折、目線をずらすために落差の大きい緩いカーブを使っていた。ただ打者にとっては直球待ちで変化の小さいカット、スプリットへの対応が可能。メッセンジャーが絶好調であれば、それだけでも相手をなぎ倒せるが、状態が悪ければつかまる確率は高くなる。
直近の3年間は34勝33敗。ほぼ五分の成績が示すように、状態によって結果が左右されてきた。そこでスライダーを習得したことにより、従来の持ち球の中で球速、曲がり幅ともに“谷間”を埋めた。直球系のボールが悪くても、スライダーが使える。また、これまで球種間の速度幅が大きかったことで状況によっては使いにくかったカーブを、速度幅が小さくなったことで使う割合も増えた。
香田投手コーチ「自分の球種が10キロ差であることは、すごく有効。打者にとっても狙い球を絞りにくいし、嫌だと思う。去年はカットが曲がらないとダメ、スプリットが落ちないとダメというケースがあったけど、今年は言葉は悪いけど“ごまかせる”。悪い中でもしっかり試合を作ってくれている」
今年で36歳を迎えるメッセンジャー。オフに体を絞り込んで来日したのも、スライダーを習得したのも、1年でも長くプロの世界で活躍するため-。パワーピッチャーの印象を残しつつ、モデルチェンジを成し遂げた右腕。その成果は何よりも、4月の圧倒的な数字が物語っている。