秋山、菅野に投げ勝った 号泣降板から7年、東京ドームでリベンジ
「巨人2-4阪神」(9日、東京ドーム)
チェンジの瞬間、阪神・秋山は何度も拳を握った。笑みを浮かべ、ベンチへ戻ってくる姿は7年前のあの日と違った。プロ初登板初先発の東京ドームでKOされ、ベンチで号泣していた19歳の少年が、たくましく成長した。7回2失点の好投で6連勝を呼び込んだ。
相手の先発は3戦連続完封中だった菅野。「対菅野さんというより、自分ができることを一人一人、必死にやっていこうと思っていた」と1球1球、繊細な注意を払った。変化球主体で、ボールを低めに集めた。
二回、マギーに左翼ポール直撃の一発を浴びたが、動揺はしなかった。後続を抑え、四回1死二、三塁のピンチも乗り越えた。7回2失点と先発の責任を果たし、大きな期待をかけていた金本監督は「一番は秋山が本当によく菅野に投げ勝ってくれた。そこです」と最大級の賛辞を贈る。
2010年8月21日、秋山は勝利投手の権利を手にしながら六回、脇谷に逆転打を浴びた。その時、打たれた球種がカーブだった。涙を流し「もっと低めに投げておけばよかった」と悔いた。くしくもこの日、そのカーブが巨人打線を幻惑し、翻弄(ほんろう)した。
初回、坂本の第1打席では2球続けたカーブで打ち取った。「緩急をうまく使っていた」と香田投手コーチが評したように、配球のアクセントになった。
「巨人はカーブの反応が良かったので怖かったですけど…。今まで球種を消して投げる球がなくなって打たれたので」と秋山。自分のボールを信じ抜いた。迷うことなく腕を振った。“心の成長”が、菅野との投げ合いを制した確かな要因だ。
「冷めた言い方かもしれないですが、ただの2勝目。しっかり次へ調整したい」。感慨に浸る間もなく、秋山は次戦を見据えた。東京ドームで菅野に投げ勝ち、つかんだ1勝-。それがエースへと飛躍する分岐点になる。