大和 左挑戦で右打席も良化 「バットのヘッドが走っている感触ある」
14日・DeNA戦(横浜)の今季初スタメンから4戦連続で先発出場し、チームの連勝に貢献した阪神・大和。昨秋から両打ちに転向したが、左打ちを始めたことで従来の右打席が良化した。本人は「もっと早くに左打ちをやっておけばよかった」と語り、心・技・体で新たな進化を遂げようとしている。
右打席でのスイングを見ていると、ほとんど頭の位置が動かない。ポイントもブレない。以前は体全体が前に突っ込むクセを指摘されていたが、軸がしっかりしたことで、バットのヘッドが走るようになった。打率・318が証明するように、打撃でも結果を残している大和。本人はこう分析する。
「左打ちをやり始めたことで右打席が良くなった。バットのヘッドを走らせようという感覚はあるんですが、それ以上に走っている感触がある。左打ちをやって、本当によかった。何でもっと早くやらなかったんだろうと」
左打席を始めたことで右打席が良化する事例は、プロ野球界であまり語られていない。大和が挙げたポイントは体のバランスだ。左打ちの練習を始めたころ、激しい筋肉痛が全身を襲った。「今まで使っていない部分を使いだしたから」と今までに経験がない箇所に張りが出てきたという。
右打席しかスイングをしなければ、使う筋肉は限られてくる。一部分だけ強くなれば、自然と体のバランスは崩れがちだ。腰や背中を痛めた選手がリハビリ段階で反対の打席でスイングするように、本来は左右対称が望ましいと言われる。
左でのスイングを重ねることで、未発達の部分が強化された。全身をバランスよく使えるようになったことで、スイングの軸が安定してきた。さらに平野打撃コーチは、技術的な視点から左打席挑戦の効果を口にする。
「バットの出し方とか、ヘッドの使い方とか、左をやることによって新たな発見がある。一から作り上げていくことで、こうだったのかという部分があったと思う。それが右打席に応用できたり。左をやることで、右が良くなる可能性はある」
大和が左打ちを始める際、まず最初にやったのが左打席でのバント練習だ。ポイントを体に染みこませるため、掛布2軍監督からアドバイスされた。地道なところからコツコツとスイングを作り上げる過程であった新たな発見。平野コーチは、そこが野球選手として大切な部分と言い切る。
「30歳近くになると野球がある程度、分かってきてどうしても楽を覚えたり、小手先でやろうとしてしまう年代。そこで左打ちを始めることで、もう一度、マイナスからやっていく気持ちになる。まだまだ伸びる選手だし、もっと力をつけてほしいと思うしね」
プロ12年目のシーズンからスタートした両打ち。それは技術向上だけでなく、野球選手としての姿勢を養い、新たな境地へと大和を導いた。