糸井、先制V弾 不振脱出へ金言くれた福留と「完璧」初アベック弾
「阪神9-2DeNA」(27日、甲子園球場)
ちょっと季節は早いが、甲子園で打ち上げ花火が乱れ飛んだ。1発目は不振に悩んだ阪神・糸井嘉男外野手(35)だ。三回に右翼ポール際へ先制の6号3ラン。この一発を号令に、不惑の主砲・福留孝介外野手(40)も6号2ランで追随。ベテランコンビ初のアベック弾で今季最多の大観衆を沸かせると、八回には中谷将大外野手(24)がダメ押しの6号ソロ。スカッとする快勝劇で、チームは月間勝ち越しを決めた。
スタンドインを確信し、力強く右拳を握った。「完璧でしたね」。今季最多の4万6616人の視線が、背番号7の一身に注がれる。糸井のバットが試合を決めた。完全復活への道筋がはっきりと見えた。
0-0の三回1死一、二塁。先発・クラインの変化球をすくい上げ、打球はそのまま右翼ポール際へ吸い込まれた。16日・中日戦以来、10試合ぶりの6号決勝3ラン。外国人投手から今季5本目の一発だ。さらに四回2死三塁では全力疾走で一塁を駆け抜け、一塁への適時内野安打。今季自己最多となる4打点の大活躍は、文句なしのヒーローだ。
「(1番起用など)監督もいろいろ考えてくださって。僕がしっかりしていれば、こんなことにならなかったんですけど…。迷惑をかけた分、今は『取り返す』という気持ちで毎日をやっています」
自己ワースト7試合、28打席連続無安打。25日・巨人戦で「H」ランプがつくまで、どん底を味わった。アップのやり方を見直し、体のキレを取り戻すため走り込みの量を増やした。それでも、なかなか一本が出ない。「もうわからん…」。オリックス時代から知る本屋敷トレーナーが「近寄りがたい雰囲気が出ている」と言うほど悩み、苦しんでいた。
そんな中、手を差し伸べてくれた一人が主将・福留だった。この日の試合前練習でも、ティー打撃を行う糸井に身ぶり手ぶりを交えた助言を送っていた。「いろいろなアドバイスをもらって、ありがたいですね」。だからこそ、今季初となるベテランコンビのアベックアーチが心の底からうれしい。2人で眺めたお立ち台からの景色は、絶景だった。
金本監督も「上がり調子だとは思いますけど」と復調の兆しを感じている。体に近くなっていたインパクトのポイントは、少しずつ改善されてきた。2試合連続マルチ安打が、再進撃の合図になる。
チームは首位を守り、5月の勝ち越し(13勝8敗)が決まった。後ろは振り向かない。超人の逆襲が、虎に力強い風を吹かせる。