岡崎プロ初弾 苦節13年!ついに出た 金本監督も「あ然」の逆転弾
「交流戦、阪神4-2日本ハム」(3日、甲子園球場)
金本監督も「あ然」の逆転弾が飛び出した。1点を追う四回、阪神・岡崎太一捕手(33)が左翼ポール際へ2ランを放ち、試合をひっくり返した。これがプロ13年目、131打席目にして初の本塁打。おまけに09年以来、8年ぶりの3安打猛打賞もマークした。守っても好リードで勝利を手繰り寄せ、首位・広島との1ゲーム差をキープした。
聖地に流れる時間が止まった。誰もが息をのみ、左翼ポール際へ飛んでいく白球を目で追った。打った岡崎ですら「訳がわからなかった」という一打。それが最高の結果になったことはスタンドが教えてくれた。今季最多4万6720人が詰め掛けた聖地にこだました大歓声が、13年目のプロ初本塁打を知らせてくれた。
場面は1点を追う四回1死三塁。初球、2球とチェンジアップを空振りして簡単に追い込まれた。指1本分、バットを短く持って迎えた4球目。高めに浮いたチェンジアップをうまくバットのヘッドに乗せた。
左翼ポール際へ飛び込む逆転の1号2ラン。ベンチ前では首脳陣、全選手がまるで自分が打ったかのような笑みを浮かべて出迎えてくれた。
金本監督は「もう、あ然。何が起こったかわからなかった。あの空振りを見て期待する人はいないと思うけど」と想定外すぎる一撃に驚きの表情。そして「今日の活躍が生涯最高で最後にならないように頑張ってほしい」と付け加えた。
今から16年前の2001年、智弁学園3年時にセンバツに出場した岡崎は、初戦の桐光学園戦で甲子園のスタンドにアーチをかけた。「覚えてますよ。実家にボールがあります」。打てる捕手として期待され、社会人を経て自由獲得枠で入団。だが1年目のキャンプで打球は外野の頭上を越えない。1軍昇格のチャンスは何度もありながら、課題の打撃がネックになった。
それでもチームで一番に球場入りし、懸命にバットを振る。ベンチでは誰よりも試合に入り込んで相手選手を観察する。「不安しかないので」。ほとんどの時間を野球にささげてきた男を、神様は見放さなかった。
プロ初、16年ぶりの聖地弾を含む3安打を放ち、8年ぶりの猛打賞。最後は捕邪飛でウイニングボールもつかんだ。前夜のスクイズ失敗を取り返すために、描かれた完ぺきなストーリー。その主人公は「勝ったことが一番。(記念球は)家族に見せてあげたい」とベテランらしく、静かに笑った。