大和 神がかり同点&V撃 猛打賞すべて適時打4打点
「阪神5-4中日」(12日、甲子園球場)
前半戦を締めたのは阪神・大和内野手(29)だった。4-4の八回、左翼線へしぶとく運ぶ決勝打。この日3安打4打点の大活躍で、チームを3連勝に導いた。2位で前半戦を終え、首位の広島とは8ゲーム差の金本阪神。まだまだ鯉の背中は遠いが、打線は上り調子だけに17日・広島戦(甲子園)から始まる後半戦が楽しみだ。
いつもクールな大和が甲子園のど真ん中で笑った。六甲おろしの大合唱が響く聖地を見渡し、勝利の喜びを体中に感じた。プロ12年目の可能性を信じ、取り組み始めたスイッチヒッターへの道。節目の前半戦ラストゲームで、新境地の左打席から決勝打が生まれた。
「何とかいいところへ落ちてくれて、良かったなと思います」
4-4で迎えた八回2死二塁。ベンチが福留らの代打起用を熟考した末に、この日2安打の大和が打席へ送り出された。「喜びと、びっくりと…」。又吉にカウント1-2と追い込まれながら、外角145キロ直球を執念で捉えた。打球は左翼線で弾み、二走・中谷が決勝のホームへ。自身は二塁を狙ったところで憤死したが、聖地は万雷の拍手に沸いた。
二回1死一塁は、左腕・バルデスから右打席で左翼線適時二塁打。六回2死満塁では、再び右で右翼線2点タイムリー。12年4月22日・DeNA戦(横浜)以来、5年ぶり2度目の1試合4打点の大暴れだ。金本監督も「ちょっと興奮しましたね」と振り返る左打席での決勝打は、プロ入り以来初の味だった。
「ヒットを打つことが全てじゃないですけど。この年で左を始めて、『辞めたい』という気持ちもいつもある中で…。こういうヒットが打てると、『やっぱりやって良かったなぁ』と思いますね」
昨年10月の秋季練習、片岡打撃コーチの助言もあって両打ち練習を開始。プロに入り「全く考えなかった」と話していた新境地への挑戦は、自問自答の日々でもあった。思うように体が動かず、後ろ向きな自分に気づくこともある。だが、諦めきれない自分もいた。
契約メーカーの久保田運動具店に左用のバットを注文。グリップを「タイカッブ」にし、890~900グラムの従来の右用バットより約10グラム軽くした。操作性を高めることが狙いだったが、手首に痛みを覚えるなど「感覚が悪かった」と大和。右打席と同じ形の“相棒”に戻した春先から、光が差し込んできた。
あの時の決断は正しかったのか-。その“答え”は、まだずっと先にある。「周りの人に感謝しています」。監督、コーチ、そして最愛の家族に支えられるプロ12年目シーズン。さあ、前に進もう。チームを3連勝に導いた29歳が、真夏の逆襲のキーマンになる。