西岡おかえり いきなりスタメンで躍動!安打に死球も!久々ツヨシ劇場
「阪神2-1広島」(17日、甲子園球場)
猛虎に頼れる男が帰ってきた。後半戦が開幕し、左アキレス腱断裂から復帰した阪神・西岡剛内野手(32)が「1番・一塁」で昨年7月20日・巨人戦(甲子園)以来、362日ぶりにスタメン出場。五回に中前打を放つなどチームを勢いづけ、首位・広島との直接対決で逆転勝ちに導いた。チームは4連勝で広島とは7ゲーム差。反攻はここからや!
みんながこの日を待っていた。西岡の帰還を誰もが信じていたことを、地鳴りのような大歓声が物語っていた。左アキレス腱断裂、選手生命を脅かしたケガから362日ぶりとなる1軍の舞台。ヒットも出た。取り戻したスピードも見せつけた。「チームの勝ちにつながって良かった」と帰ってきた背番号5は実感を言葉にこめる。
与えられた場所は「1番・一塁」。初回、いきなり初球をセーフティーバントで三塁線へ転がした。「アキレス腱を切ってスピードが落ちると言われる中で、自分の足を見てほしかった」。惜しくもファウルラインを割ったが観客は総立ちで拍手。そして聖地の空気が明らかに変わった。
首位・広島との負けられない一戦。たったワンプレーでファンを味方につけ、ボルテージを上げると、五回先頭の第3打席では追い込まれながらも、「何とか食らいついて」と外角低めへ逃げるチェンジアップを右手1本ではらった。打球は二遊間を破り、復帰後初安打もマーク。七回の第4打席では右太ももに死球を受けたが、痛がるそぶりも見せずガッツポーズしながら一塁へ走った。守備ではマウンドのメッセンジャーを何度も励ました。
一挙手一投足に湧き起こる期待感、そして大きな拍手。勝ち方を知る男が演出した異様な雰囲気が、広島の反撃を許さなかった-。そう言っても過言ではないほど、ガラリと前半戦とは違うチームに変えてみせた西岡。「本当に感謝しかない」とファンの思いにこう心境を明かす。
昨年12月のファンミーティング。西岡は壇上で涙を流した。選手生命の危機にひんしても、応援してくれるファンの存在がうれしかった。「頑張れ」と声を掛けてくれる人が、絶望にたたき落とされた心の歯車を前へ、前へ動かしてくれた。
ロッテ時代、スピードスターの異名を取ったあの頃に戻るため。過酷なリハビリを乗り越えてきた。この日、正午過ぎには甲子園の外野芝生を黙々と走る西岡の姿があった。
大粒の汗を流し、若手が動きだす前にこっそりとクラブハウスへ戻った。復活の条件は「規定打席に到達して、3割を打って、盗塁をバンバン決めた時」と言う。ここが終わりじゃない。この1試合がゴールじゃない。「アキレス腱は大丈夫なケガだと証明したい」。そんな西岡剛の物語は、まだ序章にすぎない。