岩田 676日ぶり勝利「恥ずかしいですけど…うれしいです」

 「阪神10-3DeNA」(27日、甲子園球場)

 仲間とのハイタッチが何よりもうれしかった。長い間、待ち続けた1軍のマウンド、恋い焦がれた白星-。5回2失点で676日ぶりの勝利を手にした阪神・岩田は「恥ずかしいですけど…うれしいです」と喜びをかみしめる。

 「力みがすごかった」と立ち上がりからボールが手につかなかった。初回2死二、三塁から暴投で先制点を与えると、続く二回は先頭への四球からピンチを広げ、倉本に中前適時打を許した。三回にはプロ12年目、通算163試合目にして初のボークも犯した。

 はた目にも伝わってくる緊張感。それでも懸命に粘り、1点のリードを守ってマウンドを降りた。打線の大量援護にも助けられ「本当に野手の方に感謝です」と言う。

 「自分はお葬式にも行けなかったんで…」。2軍調整中、酷暑の鳴尾浜で岩田は無念さをにじませた。5年前の横浜スタジアム、当時はグラウンドレベルにあった記者席に呼ばれた。母校・関大の大先輩に当たる上田利治氏が座っていた。

 緊張した面持ちを浮かべる左腕に、上田氏は「君が岩田君か。いつも気にして見とったんや」と笑みを浮かべ、優しく語りかけた。そして最後にこう伝えられた。

 「頑張らなあかんで」-。

 その光景は今でも目に焼き付きている。「横浜の記者席でしたよね。覚えてます」と岩田は言う。訃報に接しても、練習のため葬儀には参列できなかった。1軍で勝つことをウエさんも望んでいると信じて、心を折らず、汗を流し続けた。

 「この1試合で終わってしまうんじゃないかという気持ちもあった」と岩田。そんな危機感を乗り越え、お立ち台で浴びた歓喜のシャワーは、もしかしたら“天からの贈り物”だったのかもしれない。

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