中谷 千金虎トップ12号 金本監督助言に
「阪神3-0ヤクルト」(4日、京セラドーム大阪)
力みのないスイングから放たれた打球は、美しい軌道を描いて京セラドームの左翼2階席に突き刺さった。中谷が12号2ランを放ち、勝利を大きく引き寄せた。
1点リードで迎えた七回無死二塁。カウント1-1からの3球目だった。「いい感じで捉えられた」と、それまで打ちあぐねていたブキャナンの148キロ直球を完璧にはじき返した。
試合前に金本監督から「テークバックが浅くなっている」と指摘を受けていた。「(上体が)前に突っ込んでしまっていて、タメがなくなっていた」と中谷。試合前練習の段階で修正し、指揮官の助言に最高の結果で応えてみせた。
貢献したのはバットだけではない。先頭で迎えた五回に四球で出塁すると、次打者・鳥谷の中堅前への浅いフライが安打になると判断。一気に三塁へ向かったところで、カバーに入った左翼手のバレンティンが三塁へ悪送球。これにすぐさま反応し、本塁を陥れる激走を見せた。「スキを突く、ということは(今年の)キャンプ当初からずっとやってきたので」。好走塁に胸を張った。
昨季、2軍で中谷を指導した今岡2軍打撃兼野手総合コーチは、1軍戦の緊張感が中谷を成長させたと言う。「朝起きた時、生きるか死ぬかの戦いをイメージしながら球場に行くのか、そうじゃないかの違い」。多くのファンの期待を背負うプレッシャーが、中谷を勝負師へと変貌させた。
この日の一発で、中谷が今季本塁打を打った試合の成績は10勝2敗となった。試合の流れを変える一撃。「もっともっと増やせるように」と本塁打にこだわりを見せる男が、圧倒的なパワーで猛虎打線をけん引していく。