隼太、代打逆転V3ラン 金本監督「しびれましたね」ウル虎4連勝
「阪神6-5ヤクルト」(6日、京セラドーム大阪)
ハヤタの一振りで4連勝や!阪神は1点を追う七回1死一、二塁、代打で登場した伊藤隼太外野手(28)がバックスクリーンに起死回生の逆転3ランを放った。断然の最下位に沈むヤクルトを相手に取りこぼすことなく、約3カ月ぶりの同一カード3連戦3連勝。貯金を再び2桁に乗せ、8日からは敵地で伝統の一戦に臨む。
吼(ほ)えた。そして右手をがっちりと握りしめた。球場はこの日のヒーローを拍手喝采で包み込み、金本監督は「オッシャ」と叫び、笑顔で出迎えた。打球の行方を確認する伊藤隼の歩みは緩まなかった。「興奮しちゃいましたね」。今季第2号のアーチは代打逆転3ラン。チームを同一カード3連勝に導く、値千金の一撃となった。
代打で大仕事をやってのけたのは、1点を追う七回だった。鳥谷、俊介が連打でつないで、1死一、二塁。「代打・伊藤隼太」がコールされた。打席では研ぎ澄まされた眼光で、勝負どころを見極める。
2ボールからの3球目だった。石山が投じた外角低めの直球にフルスイングで反応。中堅方向への打球はグングン伸び、バックスクリーンに飛び込んだ。「狙いどうこうよりも、気持ちで引かないように。積極的にという感じでした」。渾身(こんしん)の一振りで3得点。最高の結果に胸をなで下ろした。
金本監督も「何とかヒットを打ってくれないかなと思ってましたけど。まさかホームランとはね。しびれましたね」と劇的な一打を大絶賛。そんな指揮官の思いに何としても応えたかった。
「広島戦のときは、いい場面で使ってもらって、結果が出なかった。それでも使ってもらえるということを意気に感じて、力に変えて。結果を絶対に出してやるという気持ちでやっています」。1日からの広島3連戦では、好機で起用されながらいずれも凡退。だからこそ、結果を出したかった。
今季3度目の1軍昇格となった6月14日。鳴尾浜で車に荷物を詰め込みながら「荷物を(車に)積んだままにしようかな」とポツリ。少ないチャンスをものにできるのか。結果を出せなければ、またファームに逆戻りする。思わず漏れた本音。不安の方が大きかった。
それを吹き飛ばしたのは、自らの努力と準備だった。「準備で結果が決まると思っているので」。打撃練習では細かな打撃フォームの修正にも手を抜かない。練習から本番さながらの集中力で取り組み、1打席での全力プレーを求めた。愚直に、ひたむきに-。そんな伊藤隼に、最高の場面で野球の神様はほほ笑んでくれた。