「巨人６－３阪神」（２５日、東京ドーム）

　田口の足元を力強く抜いていった。緩いスライダーにしっかりと体を残して対応した阪神・鳥谷のスイングからは、確かに状態の良さがうかがえる。６試合連続安打で節目の大記録まで“マジック１０”となる１９９０安打目。これが田口を攻め立てる起点になった。

　場面は同点に追いつかれた直後の二回、先頭で迎えた第１打席。カウント１－１からの３球目、外角低めに落ちるスライダーにうまく対応した。「先頭だったので、いつも通り塁に出ることを意識して」と二遊間を破る中前打で出塁した。

　１死一、三塁から青柳の右中間適時二塁打で勝ち越しのホームを踏んだ背番号１。安打はこの一本だけだったが、凡打の内容は決して悪くない。三回の第２打席はわずかに詰まらされて左飛に倒れたが、紙一重の打球だった。六回先頭で迎えた第３打席も、捉えた打球が中堅・陽岱鋼の正面を突いただけで、きっちりコンタクトは取れている。

　８月の月間打率は・３７５とハイアベレージをキープしており、例年、夏場に調子を上げてくる。２０１０年に初めて月間ＭＶＰを獲得したのも８月だった。

　対戦相手だけでなく酷暑との戦いにもなる中、夏男のイメージはベテランの域に達しても健在。本人はその要因について「暑いから。でもドーム球場が多いけどね」と多くを語らないが、豊富な練習量で体力の“貯金”を積み上げている。

　夏のロードが始まった直後に行われた京セラドームでのヤクルト３連戦。ナイターの移動ゲームにもかかわらず、人けのない正午過ぎから外野を黙々とランニングする姿があった。

　厳しい夏を乗り越えるために－。今、やるべきことを考え、徹底して準備する。「また明日、頑張ります」と力を込めた鳥谷が、偉業へカウントダウンに入った。