小野 プロ初勝利 13度目先発でやっと…「ここを目標にやってきた」

 「阪神3-0ヤクルト」(29日、甲子園球場)

 待望の1勝や!阪神のルーキー、小野泰己投手(23)が6回を2安打無失点。プロ13試合目の先発でついに初白星を手にした。三回の先頭打者では左前にプロ初安打もマーク。長期ロード明けの甲子園初戦はドラフト2位右腕にとって、初ものづくしの忘れられない日となった。今週は下位に低迷するヤクルト、中日との6連戦。取りこぼすことなく、連勝街道を突き進む。

 勝った!ついに勝った!待ちに待った日が訪れた。チームメートからも祝福を受けて迎えたゲームセットの瞬間。小野は笑顔だった。初勝利-。「今年1年、まずここを目標にやってきたので、本当にうれしく思います」。一人で上がったお立ち台。虎党の大歓声に包まれた。

 最大のピンチでも渾身(こんしん)の直球で勝負した。二回1死二、三塁。中村に対して3球勝負を挑んだ。内角へズドン。「三振を取ろうと思って取れた。それはよかったです」。その後、2死満塁とするが、石川を打ち取り無失点。自信のある球を全力で投げ込み、土俵際で踏みとどまった。

 ベンチで見ていた梅野の助言もあり、リズムを改善しようと三回からはクイックで投球。6回を2安打無失点。苦しい中で、修正に努めて何とか粘り抜いた87球だった。

 プロ初登板の5月21日・ヤクルト戦(神宮)から13度目の登板を経て、ようやくたどり着いた。「つらい時もあったけど、前を向いてやってきた。続けてきてよかったです」。周囲からも「次は勝てるといいね」と言われ続けてきた。それが「逆にプレッシャーですよ」と漏らすこともあったが、ついに打ち破ることができた。

 勝たなければならない理由がもう一つあった。5月28日・DeNA戦の前日。4歳上の姉・愛恵(ちかえ)さんに新しい命が宿っていた事が分かった。野球を始めるきっかけにもなった姉の存在。遅れはしたが、最高のプレゼントとなった。

 守護神・ドリスから手渡されたウイニングボールは「これまで支えてもらった親に贈りたい」と即答。勝利の証しは仕事で観戦できなかったという父・勝己さん(51)へ、感謝の気持ちを込めて贈る。

 ようやくプロの階段を一段上がることができた。既に目標は次のステップへ。「勝つのが目標。勝ちが続くように投げていきたい」。残るシーズンで登板も少なくなるが、またこうして歓喜の輪に加わる。もう殻は破った。小野にとって、これからが本当のスタートだ。

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