金本監督 奇跡起こせる!首位広島に5・5差 「上しか見てません」
「阪神1-0ヤクルト」(31日、甲子園球場)
奇跡の逆転Vへ一直線や-。阪神は四回に鳥谷敬内野手(36)の適時打で奪った1点を守り切り、聖地帰還を3連勝で飾った。49年ぶりの8月17勝で貯金は今季最多の15。首位・広島が敗れて、ゲーム差は5・5。「上しか見てませんから」と金本知憲監督(49)。残り25試合、死力を尽くしてトップを奪い取る。
手に汗握る展開でも、猛虎は全く慌てなかった。1-0のスコアでも確かな強さを感じさせた。はるか遠くにいた広島の背中が5・5ゲーム差、8月に限れば、49年ぶりとなる月間17勝。大逆転Vの可能性を感じさせる強さに、金本監督も手応えを口にする。
「ずっと就任当初から言ってるように、8月、9月に強いチーム、地力を発揮できるチームを目指してきた」
その“底力”を感じさせたのが四回。1死から主砲の福留が右前打で突破口を開いた。続く新人の大山は落ち着いてボールを見極め、四球でチャンスを拡大した。
そして鳥谷。「お前が変わらないとチームは変わらない」とハッパをかけてきた中心選手が価値ある中前打を放った。福留も二塁から好スタートを切って一気にホームへかえってきた。
「ちょっとなかなか点が取れそうな雰囲気ではなかったですけど、孝介もいいスタートを切ってくれてね」と目を細めた指揮官。難攻不落の右腕が相手でも、必死に好機を演出し、ワンチャンスをものにする。投手陣も懸命に守り抜く-。そんな執念はここ数年の猛虎にはなかった姿だ。
就任当初から「球際の強さ、ここ一番での強さ」を訴え続けた指揮官。その指導が着実に実を結び、打線はリーグ最多の四球を選び、三振数はリーグ最少の数字を残す。投手陣の得点圏被打率はリーグで最も低い。酷暑とともにシーズンの蓄積疲労がピークを迎える今、“火事場の底力”が勝利を呼び込める大きな要因だ。
金本監督の現役時代を含め、8月、9月に失速して優勝を逃す悔しさを何度も味わってきた。巨人に最大13・5ゲーム差をひっくり返された08年、8月終了時の首位・阪神と巨人のゲーム差は6。あの屈辱から9年、今のチーム状況で5・5差をひっくり返すことは決して、夢物語ではない。
「夏場のしんどい中でリリーフ陣に負担をかけている。9月は先発陣がリリーフ陣を守るという気持ちでやってほしい」と奮起を促した指揮官。そして「上しか見てませんから」-。残り25試合、王者の背中だけを見つめて戦い抜く。