狩野 今季限りで引退 虎生え抜き17年最古参 選手会長が男の決断「引き際」
阪神の選手会長・狩野恵輔外野手(34)が今季限りで現役引退することが15日、分かった。プロ17年目の今季は若返りのチーム方針も重なって1軍出場は5試合にとどまり、代打の切り札として表舞台で輝くことはなかった。開幕前に「結果が出なければ引退」と覚悟して臨んだシーズンだったが、自身で「引き際」を感じ、今月7日、金本監督に決断を伝えた。V戦士安藤とともに、虎現役最古参の野武士が、現役生活にピリオドを打つ…。近日中に発表され、週明けにも会見を行う。
記憶に残るオンリーワンが自らの現役生活にピリオドを打つ。生え抜き最古参の狩野がユニホームを脱ぐ決断を下した。敵地での広島3連戦を終えた今月7日、自ら金本監督に電話を入れ、「現役引退」の意思を伝えた。
選手会長として迎えたプロ17年目の今季、大きな覚悟を決めて開幕を迎えていた。「勝負の年。ダメならユニホームを脱ぐ」。早くから妻・聖子さんに決意を伝え、金本阪神の悲願へ貢献を誓った。
キャンプは2軍安芸で過ごしたが、3月下旬に1軍に合流し開幕メンバー入り。切り札として期待されたが、秋山との入れ替えで4月5日に出場登録抹消。以来8月末まで再昇格は巡らなかった。
長打力と磨きのかかった勝負強さで、真弓明信の持つ「代打シーズン30打点」のリーグ記録への挑戦を秘めていたが、若返りをはかるチーム事情も、狩野に「引き際」を考えさせる契機となった。
2軍でもモチベーションを絶やすことはなかったが、夏場を前に次第に自問を重ねるようになっていた。「もう、ダメかもしれない」。家族には「7月いっぱいをメドにする。そこで(1軍に)呼ばれなければ…」と伝えた。いつも狩野の意思を尊重してきた妻は「分かりました」とうなずいたが、指揮官に決断を伝えたことを聞かされた夜は「もう本当に終わるんだね…」と、両手で顔を覆った。
ファンの記憶に深く刻まれた男だった。00年度ドラフト3位で前橋工から阪神入りし、強打の捕手として将来を嘱望された。06年にウエスタン・リーグで首位打者に輝くと、07年に鮮烈なブレークを遂げる。同年4月20日の巨人戦(甲子園)で代打でのプロ初安打がサヨナラ打となり、翌日にはプロ初本塁打。「かのう」の名は一躍全国区になった。
09年には矢野の後継として初の開幕スタメンを果たすなど正捕手の座をつかみかけたが、故障に泣いた。10年秋に椎間板ヘルニアを患い手術。11年に外野手登録となり、再発を繰り返した12年のオフには育成契約を言い渡された。「思い出したくない時間」を経験しながらも、翌13年に支配下復帰し、不死鳥のように表舞台へ帰ってきた。
今季、狩野が再び1軍に呼ばれたのは8月26日。9月4日に抹消されるまで3度打席に立ったが、一度も快音を奏でられなかった。
「ボールが凄く速く感じて…。やっぱり、もう潮時だな、と」
今後は未定。球団は今月27日のウエスタン・広島戦で狩野の「引退試合」を準備する。誇り高き背番号99が大好きな甲子園に「さよなら」を告げる。