新井良太、笑顔の幕引き ラストプレーに兄から「最高だった」
今季限りでの現役引退を決めた阪神の新井良太内野手(34)が11日、兵庫県西宮市内の球団事務所で会見を開いた。涙はなく、スッキリした表情で“良太スマイル”全開。今季17試合の出場に「数字のケジメをとらないといけない」と引き際を決めた。今後は未定。惜しまれつつの引退だが最後まで笑顔、笑顔の幕引きとなった。
悩んだ。苦しんだ。必死に戦い、闘い抜いたからこそ、最後は笑顔で-と決めていた。惜別ムード漂う引退会見を、新井良は笑顔で晴れやかに変えた。「いまは本当に、スッキリしています」。自問自答し、広島の兄・貴浩にも相談しながら、最後は自ら終止符を打った。
「毎日、ファームで試合が終わったら辞めようか…でも、打てたらまだ、いけるんじゃないかって。ずっと繰り返しの毎日だった」
引退を意識したのは7月中旬、球宴明けの頃だった。まだできる、もうできない。揺れる胸中を真っ先に打ち明けたのは兄だ。「お前の人生。自分が決めたらいい」。両親らからは惜しむ声もあった。それでも最後は潔く「1軍で活躍してナンボの世界。数字のケジメはとらないと」と引き際を決断した。
懸命に駆け抜けた12年間だ。「自分は下手クソで不器用で。それだけでやってきたので」。泥だらけになるまで白球を追った。体が壊れるまでバットを振った。声が嗄(か)れるまでベンチで鼓舞した。歴代監督、片岡打撃コーチらは「良太の声も戦力」と言う。ファンや先輩らに愛され、後輩から慕われる理由だ。
『技術もない、センスもない。それで声もなかったら、どうする?だったら声を出せ』
原点は広陵高・中井哲之監督の言葉だ。高校進学と同時に兄が広島入団。その兄と比較される中、恩師は容赦なく厳しく接した。「声とか気持ちで結果が出るほどプロが甘くはないと。でもそれがないと、戦うことはできない」。16歳の春、胸に刻んだ言葉を18年間忘れなかった。「プレースタイルは、最後まで貫けたと思います」。静かに笑った。
兄には10日の試合後すぐに電話を掛け、感謝の言葉を伝えた。「最高だったぞ。感動したよ」。追い掛け続けた背中は最後まで温かかった。「つらいこと、苦しいことがほとんどでしたけど。甲子園でプレーできること、大歓声の中でお立ち台に上がること。励みに頑張ってこられました」と新井良。悔いはない。潔く別れを告げる。笑顔、笑顔のままで。