福留、天国の恩師に見せた 教え通りの強振で二塁打
「オープン戦、阪神2-2中日」(10日、甲子園球場)
左中間を真っ二つに切り裂いた打球に運命を感じずにはいられなかった。19年前の99年4月4日の広島戦-。当時、中日の指揮官だった星野監督の目の前で放ったプロ初安打が二塁打だった。あの時と同じツーベースに阪神・福留孝介外野手は「何か縁があるのかな」とこみ上げる思いを隠さなかった。
三回2死走者なしで迎えた第2打席。カウント1-1から笠原が投じた外角直球に力強く踏み込んだ。星野氏に自身の特長として刻み込まれたフルスイングではじき返すと、痛烈なライナーは左中間のど真ん中に弾んだ。
悠々と二塁に到達したところで代走を送られてベンチへ退いたが、一塁側のファンはスタンディングオベーションで待ち受けた。志願して出場した追悼試合-。ファンも福留も星野氏へ感謝の思いを抱いていたからこそ、どこか感動的な風景が初春の聖地を演出した。
金本監督は「あそこまで踏み込めてるという証拠ですから。遠いところはなかなか踏み込めないけどね、こういう寒い時には。一安心です」と目を細めた。中日に入団した当初、星野監督から『お前の特長は何だ?』と問われたことがあった。プロの世界に飛び込み、まだ右も左も分からない中、「『全力で思い切って振ることだろ?それをやれ』と言われて。ここまでできているのも監督が道筋をつけてくれたから」と福留は明かす。
「僕にとっては永遠の監督です」と時には厳しく、そして優しく受け止めてくれた星野氏を評した背番号8。「いろんな野球の話をベンチの監督の前で聞いていた。僕が発する言葉は監督から教えられた言葉です」と言い、「次の世代に伝えていけるように」と力を込めた。
野球を続ける以上、絶対に忘れない“闘将イズム”-。野球ファンへ、そして次世代の選手へ、福留が伝えていく。