糸井ほえた 右手一本、右翼席中段へ特大1号弾
「巨人8-4阪神」(31日、東京ドーム)
一塁ベースを回った。視線の先は、オレンジ色で埋め尽くされた右翼スタンド。着弾点を見届けると、阪神・糸井は小さく吠(ほ)えた。手に残る確かな感触。最後は右手一本で振り抜いて捉えた打球は、今季1号の先制アーチとなった。
虎党にとって最初の歓喜の瞬間は、初回に訪れた。1死一塁の場面で、ゆっくりと打席に入った。ボール、見逃しストライク、ファウル。1球ごとに声援が大きくなっていった中、上本がけん制死。重くなりかけた流れを、糸井が一振りで断ち切った。
失投は逃さない。4球目に真ん中付近へ甘く入ってきた変化球に、豪快なフルスイングで応戦。飛距離はぐんぐん伸びていき、右翼席中段に飛び込んだ。軽やかな足取りでダイヤモンドを一周。開幕2試合目でのシーズン1号本塁打は、オリックス時代の2014年に並ぶ自己最速タイだ。仲間に出迎えられ、白い歯が光った。
しかし、チームは試合終盤に逆転を許し、今季初黒星を喫した。「負けたら意味がない」。糸井はつぶやくように振り返った。
指揮官、そして自らが自分自身に課す課題があった。シーズン前から掲げているのは「試合を決める一打」だ。この日は4打数1安打。連打で3点を奪った三回には、1死二塁から四球を選んで得点に貢献したが、その後は出塁できず。2三振を喫した。
それでも、と前を向く。糸井にとって今年は、優勝と個人タイトルの獲得を誓った大切なシーズンでもある。阪神に移籍して2年目。チームが勝つために、優勝するために自身の力が求められている。「明日は絶対に勝ちたい」と糸井。次戦こそ、その一撃で勝利を呼び込む。