鳥谷、吹っ切れた 連続試合出場がストップした翌日に即安打
「交流戦、阪神3-6ソフトバンク」(30日、甲子園球場)
阪神の敗戦ムードを忘れさせるような大歓声が沸き起こった。「代打・鳥谷」がコールされると、ファンは必死にメガホンをたたき、その名を呼んだ。連続試合出場が1939試合でストップした翌日、新たなスタートを予感させるきれいな打球が、右中間へ飛んだ。
3点を追う九回1死一塁、9番・モレノの代打で出番が巡ってきた。この日一番の歓声が背番号1の背中を押すような幻想的な風景が聖地に広がった。「すごかったですね」と鳥谷の耳にも届いていた。
フルカウントからの7球目、ソフトバンクの守護神・森が投じた宝刀・カットボールをコンパクトなスイングで捉えた。打球はきれいなライナーとなって、右前に弾んだ。球場全体から大きな大きな拍手が送られ、鉄人の再スタートを祝福。一発が出れば同点のチャンスを演出する一打に「何とかつないでいけたら」と振り返った。
記録が止まった翌日でも、午前中にクラブハウスへと入り、ゲームに出る準備を黙々とこなした。その姿勢はいつもと変わらなかったが、金本監督はある変化を感じ取っていた。
室内で行われた打撃練習を真後ろで見る中、「練習から違っていた。いいなと思ったから、期待はしていたんだけどね。ああいう打球を打てるんじゃないかなというのが、練習から見えてたからね」と明かす。内角の厳しい球を引っ張ったヒットだけに「あれを打つのは難しいよ」と打撃が戻りつつある確かな証拠だ。
チームは交流戦連敗スタートで勝率5割に戻った。だが、記録から解き放たれた鳥谷が復調すれば内野の競争は激化し、DHでの起用も視野に入るという収穫はあった。「再スタートというわけではないけど、持ち場で頑張ります」と鳥谷。チームが再び勢いを取り戻す要因は、少なからずある。