藤浪407日ぶり勝った!!みんなが待ってた!復活0封 実力でつかんだ今季1勝
「交流戦、楽天0-4阪神」(15日、楽天生命パーク宮城)
虎党の誰もがこの日を待っていた。108球の熱投。阪神・藤浪晋太郎投手(24)が6回1/3を4安打無失点の好投で、昨年5月4日以来、407日ぶりの白星をつかみ取った。最速154キロの速球に、切れ味鋭い変化球を織り交ぜ9奪三振。再び輝きを取り戻し始めた右腕が、チームを3位タイへと導いた。
ベンチの天井を見上げると、フーっと息を吐いた。3点リードの七回、1死一、二塁での途中降板。救援を仰いだ108球に悔しさは残る。だが、野手は必死の攻撃で、ベンチは小刻みな継投で執念を紡いだ。6回1/3を4安打無失点。藤浪が中心で輝いた。407日ぶりの1勝だった。
「うれしい気持ちと悔しい気持ちと、複雑ですね。いろんな方に勝ちを付けてもらった。次は自分の力で恩を返せるようにしたい」
霧雨覆う敵地上空。雨を振り払うよう、負の流れを断ち切るように、目いっぱいに腕を振った。再昇格した3日の西武戦から中11日で迎えた登板。「大きかった」と分岐点は三回だ。1死から連打と四球で満塁。3番・島内だ。1ストライクから2球目、外低めのフォークを振らせた。三ゴロで5-2-3の併殺。ピンチを脱した。
キャリーバッグ2つにボストンバッグを背負い、カバンを持って飛行機に乗った。故障以外で初めて2軍落ちを経験し、3勝に終わった昨シーズン。何度、悔し涙を落としたただろう。「何とかしなきゃって。あれ、あれ…の毎日でした」。コツコツと積み上げた引き出しは、開けても開けても空っぽだった。
「幼少期から積み重ねたものが突然、戻らなくなった。投げるのも嫌になった自分がいた。常にイライラしていて、野球に集中することができなかった」
1月。ダルビッシュを師事し、初めて海外での自主トレに向かった。カーショーらメジャーの技術に驚き、刺激を受ける部分もある。だが、それ以上に野球選手として、人として原点に触れた2週間だった。堂々と街を歩き、買い物をして、オープンテラスで食事する。ダルビッシュ家族のサポートも受けた。すべてが新鮮だった。
「不安はあった。でも、人の優しさに気付くことができたので。帰りの飛行機で席に着いた時、自然と来てよかったと思えました」
今季も2軍落ちを経験したが、進むべき道に迷いはなかった。霧雨は展開が進むに連れて晴れ、カクテル光線が鮮やかに藤浪を照らす。「400日くらいですか。内容が内容なので感傷に浸ることもなかった。久しぶりだな、くらいで」。長いトンネルの先に光を見つけ、出口の先には続く道がある。再スタートの1勝。108球からまた、戦いが始まる。