才木、チーム救って2勝目 岩貞7球で退場…緊急登板もあっぱれ
「ヤクルト7-15阪神」(30日、神宮球場)
虎の2年目右腕がチームのピンチを救った。初回、危険球退場となった先発・岩貞の後を受け、無死一、二塁から才木浩人投手(19)が緊急登板。1点は与えたが、二~六回まで得点を許さず2勝目を挙げた。若虎の好投に打線も応え、今季2度目の先発野手全員安打。15安打15得点の猛攻で圧倒した。
視界の先に広がったのは黄色い大応援団だった。見渡す限りのスタンディングオベーションで、弱冠19歳の才木が出迎えられる。緊急登板で、チームを、岩貞を救ったヒーロー。インタビュアーの質問がかき消されるほどの大歓声の中で、無邪気に笑っていた。
初回、先発の岩貞が7球で危険球退場。不測の事態に、すぐさまブルペンへと肩を作りに向かった。投げること10球余り。「本当に緊急だった」。それでも自らの立場は分かっていた。「僕はロングリリーフ。心の準備はできていました」。一人ずつ、着実に抑えていこう。才木の心は決まっていた。
ピンチは何度もあった。それでも抑えきった6イニング。最後は気持ちしかなかった。初回に岩貞の残した走者2人に、四球で許した出塁。無死満塁で、いきなりバレンティンと対峙(たいじ)する展開に汗をぬぐった。
「やっぱり攻めの姿勢で、どんどん攻めていければいいかなと思っていました」。外角低めの149キロ直球で三ゴロに打ち取る間に1点こそ許したが、その言葉通りマウンド上の才木は逃げなかった。畠山は二飛、坂口は遊飛に打ち取り、最少失点で切り抜けた。
球数が増えてきた五回、六回には制球が不安定になった。それでも動じない強心臓。3ボールからでも果敢に内角を突いていった。攻める。才木には乗り越えなければならない壁があった。
チーム事情で、いきなりの中継ぎへの配置転換。こみ上げる悔しさを押し殺した。「決まったことに、あーだこーだ言っても仕方ない。自分が結果を出せばいいだけなので」。先発ローテの枠から外された無念さを胸にしまい、懸命に前を向いた。そしてスクランブル登板となったこの日、6回3安打無失点で2勝目。初回に6点を先制していたとはいえ、その裏の緊急事態を乗り越えたからこその白星だ。金本監督も「次は先発。今日これだけ投げたということで」と約束した。
ベンチでは、主将・福留に声をかけ続けてもらった。ピンチを招くと、内野陣もすかさず駆け寄ってくれた。そして、15得点という大援護のプレゼント付きだ。投げ抜いた98球。才木は控えめに虎党の声援に手を上げると、仲間の待つバスへとはにかみながら向かった。