糸井4番の意地!一矢報い打 唯一の適時打で14戦連続出塁
「広島5-4阪神」(4日、マツダスタジアム)
悲鳴と歓声が交差する。ナインの執念を乗せた白球が、右翼前で力強く弾んだ。広島と17ゲーム差で迎えた一戦。絶望的な状況に陥っても、グラウンドに立てば意地がある。一時、勝ち越しとなるタイムリー。阪神の4番・糸井嘉男外野手(37)のフルスイングで首位チームに一矢報いた。
六回だ。3-3。好機であと1本が出ず、取って、取られ…。揺れる試合展開の中、2死三塁。4番が打席に入った。2番手のアドゥワに対し、1ストライクから2球目。2球続けた140キロ内角球をはじき返した。2年目右腕の力勝負に、力で打ち勝って見せた。
「打ったのはストレート。流れが行ったり来たりしている中で、なんとかしたかったので。勝ち越しのランナーをかえすことができて良かったです」
試合中、糸井は1本に込めた思いを、広報を通じて談話にした。昨年9月18日。甲子園での対戦に敗れ、広島の胴上げを見届けた。他選手が早々と引き揚げる中で1人、ベンチから終了まで目を離さなかった。「現実をちゃんと見ておこうと」。既に自力優勝の可能性が消滅し、今年も厳しい状況にある。だが、赤いユニホームを見れば、自然と燃える。
チーム4得点のうち、唯一のタイムリー打点。塁上をにぎわせながら、あと1本が出ない中、貫禄の一振りでもあった。2戦連続安打、14試合連続出塁。まだ右足腓骨(ひこつ)骨折は癒えないが、4番として奮闘を続けている。悔しさあふれる試合後、言葉を発することはなかった。雪辱を胸に秘め、フルスイングで流れを変える。