藤浪、虎投37年ぶり満塁弾 葛藤に打ち勝ち81日ぶり3勝目
「DeNA4-20阪神」(16日、横浜スタジアム)
チームを救い、自身の心も救った。プロ初の満塁弾。「たまたまです。ビックリしました」。表情を崩すことなく、慣れない足取りでダイヤモンドを一周する阪神・藤浪に大歓声が注がれた。
金本監督も思わずベンチを飛び出したのは三回だ。1死満塁、田中健の141キロ直球に食らいついた。打球は吸い込まれるように黄色く染まった左翼席へ到達。自身4年ぶり、プロ通算2本目のアーチは、両リーグ投手では1999年のガルベス(巨人)以来19年ぶり、阪神投手では1981年の山本和行以来の満塁本塁打となった。
5回6安打4失点で四死球は1つずつ。「先発としてもう少し長いイニングを投げないといけなかった」と決して納得のいく結果ではなかったが、課題の制球については一定の手応えを得た。
2軍再調整中、自分自身に言い聞かせるように、藤浪は同じフレーズを繰り返した。「やってきたことは間違いじゃない」。言葉の裏に葛藤、覚悟、決意がにじむ。81日ぶりの3勝目。終盤の連戦に期待を抱かせた1勝は「2人の我慢」が届けた希望でもある。
8月29日の試合前、金本監督は鳴尾浜球場に向かった。2軍視察…の名目に加え、欲したのは藤浪との直接面談。後半戦のキーマンに指名した24歳に、指揮官自ら昇格を打診した。「日曜日(9月9日・巨人戦)、投げてくれんか?」。藤浪は「お任せします」と答えた。指揮官は言葉の奥の思いを察し「じゃ一回、飛ばそうか」と1軍復帰を見送った。
メッセンジャーが戦列を離れて先発は駒不足の窮状。目先の1勝を求めたいが、柱として期待する男の気持ちに懸けた。藤浪も同様だった。「当然、1軍で投げたい。葛藤はありました。でも、今の自分に何が大切か。2軍でやるべきことはたくさんあった。間違いじゃなかったです」。“15日の我慢”。耐えて、待って、つかんだ1勝だ。
残り21試合。ここからが正念場。チームが苦しいときこそ、藤浪が輝きを放つ。