鳥谷、阪神最多安打 藤田平氏に並ぶ通算2064本 節目の一撃も…2戦連続零敗
「広島1-0阪神」(2日、マツダスタジアム)
偉大なる先駆者に肩を並べた。阪神・鳥谷敬内野手(37)が八回に代打で登場し、遊撃内野安打。通算安打数を2064本とし、藤田平氏(デイリースポーツ評論家)が持つ球団最多安打記録に並んだ。ただ、背番号1の安打も得点には結びつかず、2試合連続で今季13度目の完封負けを喫した。
遊撃前に転がった打球が、芝の境目でポンッと跳ねた。苦しみ続け、耐えながら出番を待った1年。野球の神様は鳥谷に味方した。失策か安打か。一塁を駆け抜けたベテランが、ゆっくりとスコアボードを向く。表情一つ変えず「H」ランプを見届けた。藤田平氏が持つ球団記録に並ぶ2064本目の安打だ。
「あんまり…。そこを目指しているというわけでもなかったし、打てるとも思っていなかったですが。よかったです」。試合後、敗戦に笑みはない。球団史に残る大偉業でも変わらず、淡々と、言葉少なに振り返る。1点を追う八回、岩田の代打で打席に立った。
マウンドには代わったばかりのヘルウェグ。代打のセオリー通り、積極的に初球を狙った。内角低めの148キロに詰まらされたが、フルスイングした打球は遊撃手前で跳ねた。出場4試合ぶり、今季49本目の安打。後続が倒れて得点にはならなかったが、この日ほぼ唯一の見せ場を作った。ベテランの執念だ。
プロ15年。積み重ねた2064本の安打は、痛みに耐え続けた奇跡の軌跡でもある。過去に2度、公表しなかった「大ケガ」があった。2015年6月21日・ヤクルト戦(甲子園)。六回、久古から背中付近に死球を受けた。試合後は「大丈夫」と一言。チーム内でも「肉離れ、筋挫傷」の発表で押し通した。
だが、実は肋骨(ろっこつ)が折れる重傷だった。朝、誰もいない球場に来て治療。他の選手が来る頃には、何事もなかったようにトレーニングを始めた。「休もう」。球団スタッフの説得にも、「絶対に出る」と頑なだった。関係者は明かす。「2カ月近くは、痛かったと思う。普通はやめるし、止める。でも、出る以外の選択肢はなかった」。主に1番として、4年連続のフルイニング出場。ベストナインにも輝いたシーズンだ。
「誰にも知られたくない。自分にできる治療を教えて欲しい」
2012年は右肩痛との闘い。必死に試合に出る道を探した。そうやって常に限界を乗り越えてきた。だからこそ昨年、鼻骨を折った時は、病院に向かう車に乗る前から「大丈夫、出れます」と言った。「毎日勝ちたいし、打席に立てば打ちたい。また、頑張ります」。グラウンドに立ち、勝つことにこだわった15年間。スタメンでも、途中出場でも信念は変わらない。2065本目も勝利のために。