【金本監督電撃退任・下】揚塩社長と会談後「辞めることになってしまった」
阪神・金本監督が電撃辞任した。球団側が続投方針を示し、来季巻き返しへ向けて組閣作業も進んでいた中での急展開。その裏側ではいったい何が起こっていたのか。阪神取材班が緊急連載で迫る。
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甲子園最終戦となった10日のDeNA戦後、金本監督はスタンドに向けて「謝罪」のスピーチを行った。頭を下げ、最下位の責任を1人で背負った。11日の辞任表明とされる取材の中で、指揮官がそのスピーチに関して触れたのは2点だ。
-昨日はファンにあいさつをされたが。
「辞める辞めないの深い意味はなかったけど。本当に昨日は謝罪メインのあいさつでしたけど。僕の中では」
-最終戦の前に辞任の意向を伝えようとは?
「それはなかったですね。最後、甲子園で勝たないといけないというのがあったから。そこまで頭が回らなかったから」
ここは推測も入るが、もし本当に辞任の意思を固めていたのなら-。金本監督の人柄を思えば、「謝罪」だけでなく「サヨナラ」の思いもスピーチに込めたはずだ。まして、タテジマを着て甲子園のファンの前に思いを発することができる、最後の舞台だったから。
急転したのはその後だ。複数の関係者がクラブハウスで、揚塩社長が金本監督の元に向かったところを目撃している。それから数時間後の深夜、金本監督はコーチ陣に「辞めることになってしまった」結末を告げる連絡を入れて回ったという。
金本監督が突然発した「辞任」ではなく、一部の人だけが知りうるシナリオが進行していたのなら。それはスピーチを聞き、金本監督4年目に胸をはせたファンを裏切るものであり、さらに言えば、金本監督に「不必要」に頭を下げさせる最悪のものでもあった。
もちろん今季の低迷がなければ、この日を迎えることはなかった。ただ、現役時代の功績や、火中の栗を拾う形で再建に尽力を尽くした指揮官に対し、「辞任」と表される事実上の「解任劇」の流れはあまりに寂しい。
11日、揚塩社長は「なぜ勝てなかったのか、そこをしっかりと分析して課題を持って、来季にあたるようにフロント、現場一体となって取り組んでまいります」と声を上げたが…。金本監督と戦う気持ちだった人たちには、どう聞こえるのだろう。とてもこの言葉で、フロントが一体となるとは思えない。=おわり=