1位の近本、夢は赤星 俊足巧打の社会人MVP「足、走塁生かしていきたい」
「プロ野球ドラフト会議」(25日、グランドプリンスホテル新高輪)
阪神はドラフト1位で大阪ガス・近本光司外野手(23)の交渉権を獲得した。1位指名で大阪桐蔭・藤原、外れ1位指名で立命大・辰己の抽選を外したが、俊足巧打のスピードスターが、矢野阪神1年目の来季を彩る。
いつもとは違う“戦闘服”に身を包み、言葉一つ一つに喜びをかみしめた。近本が笑う。「自分の名前を聞いたときはビックリしました。なおかつ小さい頃からずっと試合を見てきたので」。兵庫県生まれで兵庫県育ち。夢をかなえてくれたのは、通い慣れた甲子園を本拠地とする阪神だった。
運命の赤い糸だったのかもしれない。わずか20日前、近本は甲子園で阪神戦を見ていた。プロの外野手の動きを目で追いかけ、必死に吸収しようと研究。猛虎の外野は福留、糸井らが主力で、中谷や高山らが定位置争いを繰り広げる激戦区でもある。それでもそこに「割って入っていけたら」と言い切った。覚悟は十分だ。
夢はでっかく描く。目標に掲げたのは「新人王」と「盗塁王」。「赤星選手みたいな走れる選手になりたいです」。不思議と迷いはなかった。大阪ガスの橋口監督も「盗塁はかなりの確率で決まる。プロでもいけるでしょう。塁に出られればね」と意地悪そうに笑うとすぐさま続けた。
「僕たちにとって(失うのは)痛手ですよ…」
大学2年の頃に投手から野手へと転向。ここが「分岐点」だと回顧する。それでも19歳での決断は未来へとつながっていた。走塁面での資質が開花。見初めた大阪ガスから「練習に参加してみないか」とオファーを受けるほどに。
そして飛躍を遂げた今年。本塁打を打つなど、今年の都市対抗では初優勝に貢献。打率・524で首位打者も獲得した。社会人時代に積み重ねた2年間の努力が、プロ野球選手への道をこじ開けた。
「自分の武器は足、走塁だと思っているので、それを生かしていきたい。超積極的というプレースタイルは、自分にも合っていると思います」
12月に挙式を控える新婚さんだ。いつもより少し遅い帰宅は、最高の“手土産”付き。「奥さんが関西に残りたいと言っていたので。よかったなって言いたい」。照れ笑いが、うれし笑いに変わる。夫婦で踏み出す大きな一歩は、生まれ育った兵庫の地で始まる。