【阪神ドラフト選手紹介・斎藤友貴哉(下)】プロへ行くため変化球の向上をみっちり
今秋のドラフト会議で阪神から指名を受けた7選手(1~6位、育成1位)を紹介。今回はドラフト4位・斎藤友貴哉投手(23)=ホンダ=に迫る。今回は第2回。
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桐蔭横浜大4年の春にはリーグ戦MVPを獲得した斎藤が、実感を込めて振り返ったことがある。「高校の時、後ろを向くことが多かった」。大学時代も「きょう、打たれるかもしれない」とマイナス思考が脳裏を支配。だが同級生左腕の高橋拓巳(現日本生命)が言った。「マイナスのことを考えるとよくないよ」。何げない言葉が思考の変化をもたらした。
4年生でプロ志望届を提出するも、自分の名前が呼ばれることはなかった。野球人生で2度目の挫折。それでも「切り替えが早い子」と評するのはホンダの岡野勝俊監督(42)だ。「もう一回、プロに行く前の修業というか、『2年でプロに行くんです』とけっこう割り切っていて」と振り返る。
その岡野監督が斎藤を初めて見たのは16年の12月。「合宿に来ていてキャッチボールを直接受けました。今まで見たことのないボールを投げていた」と目を丸くした当時を思い出し「ストレートだけならプロで通用する」と太鼓判を押した。
だからこそ、変化球の向上がプロで活躍するために必須となった。自身のデータ解析、動画でリリースポイントを確認したり、さまざまなことに取り組んだ。フィールディングが課題で、バント処理やけん制に不安を残した。12月中旬に静岡県で行った投手陣のみの「ピッチャー合宿」では、1週間みっちり克服に努めた。
不安が自信に変わると、大舞台でも結果を出せるようになる。今年6月の都市対抗野球2次予選、第1代表決定戦に先発し、日本通運を相手に7回無失点で勝利に貢献。本戦の1回戦、JR四国戦でチームは敗れたものの、5回1失点と好投した。
そしてようやくプロ野球選手になった。高校時代の自分を思い返し「気持ちだけプロ(野球選手)で、なれる選手じゃなかった」と苦笑いを浮かべた斎藤。これまでの野球人生は決して順風満帆だったとは言い難い。だが、こうしてプロという舞台に足を踏み入れた。1年目から、猛虎の一員としてその名を全国にとどろかせていく。
◆斎藤友貴哉(さいとう・ゆきや)1995年1月5日生まれ、23歳。山形県東根市出身。184センチ、90キロ。右投げ左打ち、投手。山形中央では1年夏からベンチ入りするも、甲子園大会ではベンチ外。桐蔭横浜大に進学後は、4年春にリーグ戦MVPを獲得。プロ指名届を提出するも指名漏れでホンダへ入社。最速153キロの直球にスプリット、カーブ、ツーシームを武器にする。50メートル走6秒3、遠投120メートル。