【阪神ドラフト選手紹介・川原陸(下)】入寮前に家族で登った普賢岳

 今秋のドラフト会議で阪神から指名を受けた7選手(1~6位、育成1位)を紹介。今回はドラフト5位・川原陸投手(17)=創成館高=に迫る。

  ◇  ◇

 思いを届けたい人がいた。ドラフト当日。陸は創成館で、母・えりかさんは不安と恐怖から、家を出ることができず自宅で…。離れた場所から互いを思い、夢がかなう瞬間を待った。「阪神 川原陸」。駆けだしていた。久しぶりのハグは忘れない。「よかったね」、「ありがとう」。母と離れた高校時代が、陸を強くした。

 雲一つない真っ青な空。晴れ渡っていた。頂点まで登り詰めてほしい-。祖父母の思いもあり、最後の家族旅行では登山を計画。創成館の寮へと送り出す前に、普賢岳へと登った。標高1359メートル。静かな山が織りなす景色、空気を感じながら約1時間。家族との、そして母との時間を過ごし、創成館の門をくぐった。

 自らを鼓舞するために、日の丸のユニホームを寮へと持参。それでもすぐに実家へ持ち帰ることになったという。「みんなうますぎる。こんなの持っていっても何の意味もない」。シニア時代に日本代表を背負った経験…でもそれは、もう過去の栄光。気持ちをリセット、改めてスタートを切った。

 高校3年間で振り返った試合は、2017年10月25日の秋季九州大会準々決勝。沖縄尚学戦だった。「あのときが一番うれしかったです」。延岡学園に、東筑…見渡せば強豪校ばかりだった。そんな中で沖縄王者を5回2失点に。この白星が原動力となり、同大会初優勝を飾った。その後、明治神宮大会ではスター軍団・大阪桐蔭と準決勝で激突。公式戦で唯一土をつけ、準優勝を果たした。

 存在感を示した明治神宮大会は祖父母が声援を送り続け、甲子園での試合は全試合、はるばる長崎から家族が駆けつけていた。それでも最後の夏は創志学園に初戦敗退。3回2/3を投げ4失点で夏は終わりを告げた。「頑張ったね、おつかれさま」。母からメールが届いた。これまで17年間褒められたことはたくさんあった。それでも怒られたことは記憶にない。近くで見守り、いつも支えてくれた母へ。「今度は(家族に)、甲子園で勝っている姿を見てもらいたいです」。思いはより一層強くなった。

 今月12日に、陸は18歳を迎える。近くで家族と過ごせる誕生日は、これで最後になるかもしれない。母・えりかさんも笑った。「祝ってあげたいですね。思い出に残るように」。サプライズのお手製くす玉に、ドラフト後には阪神のペットマークをデコレーションしたお祝いケーキ…。一つでも多くの思い出を力に、新天地・阪神へ。創成館が生んだプロ選手第1号の戦いが、幕を開ける。

 「大陸のような大きな男になってほしい」

 母からの願い、思いは未来へとつながった。

 ◆川原陸(かわはら・りく)2000年12月12日生まれ、17歳。長崎県長崎市出身。184センチ、80キロ、左投げ左打ち。小学1年生のころにソフトボールを始めると、4年生には西山少年野球団で軟式野球に。中学に上がると、長崎北シニアで硬式野球を本格的に始めた。中学3年では日本代表にも選出され、その後創成館へと進学。昨秋の明治神宮大会では大阪桐蔭を撃破し準優勝に。今年の選抜は8強で夏は初戦敗退に終わった。

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