【神機一転】元阪神・緒方 戦い抜いた6年間 PLの重圧感じても終わりは心晴れやか

 数多くの選手が今季限りで阪神のユニホームを脱いだ。第2の人生のスタートに向け、次の進路が決定した選手もいれば、未定という選手もいる。それぞれの新しい人生に挑戦する虎戦士の思いを伝える「神機一転」。俊足巧打の左バッターとして期待されながら、数々の故障に泣かされた緒方凌介外野手(28)に迫る。

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 ボロボロになるまで戦い抜いた6年間に悔いはない。「もっとやりたかったなとか、もっとできたな、というのはなくて、『ここで野球は終わろう』と決断できた」。みやざきフェニックス・リーグで古傷の右膝を負傷。その後、緒方は戦力外通告を受けた。

 名門・PL学園出身。偉大な先人たちの名が球史にさん然と輝く。「PLやったらそれくらいできて当たり前、PLは野球がうまいという認識をされる」。常に独特の重圧を感じていた。「PLの先輩方は球界を引っ張っていく選手が多い中、そういうのができないというのが…。PLのOBとして情けない、そのつらさはありました」。誇りだったものが、少しずつ重荷へと変わっていった。

 だが、懸命に自らと向き合い続けた。職業にまでした野球。「嫌いになって終わりたくない」。折れそうな心を奮い立たせ、純粋に野球を楽しんでいたあの頃の気持ちを取り戻した今季。終わりを迎えることになっても、心は澄み切っていた。

 プロ生活を振り返れば、楽しかったこと、うれしかったことばかりが脳裏に浮かぶ。2年目だった2014年6月7日のオリックス戦(甲子園)。「ちょうどあの時のライトが糸井さんで、捕られるんじゃないかと思っていた。それが必死に走っていたら『ワーッ』っていう声援が聞こえて」。プロ初本塁打の感触は、忘れることのない大切な思い出だ。

 第2の人生は球団職員として歩み出すことが決まった。広報部に配属され、すでに業務を開始している。「裏方にはなったけれども、チームのためにできることをやって、それが微々たるものでも貢献になればうれしい」と新たな決意をにじませた。ひたむきな姿勢は、グラウンドを離れても変わることはない。

 ◆緒方凌介(おがた・りょうすけ)1990年8月25日生まれ、28歳。大阪府出身。176センチ、74キロ。右投げ左打ち。外野手。PL学園から東洋大を経て、2012年度ドラフト6位で阪神入団。13年5月3日・ヤクルト戦(甲子園)でプロ初出場。通算51試合出場で打率.220、2本塁打、5打点。

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