【トラ番敵情視察】中日鼓舞するビシエドの練習風景 改革へ「今のミスは喜べ」
デイリースポーツトラ番が他球団のキャンプに潜入する『敵情視察』の第4弾は、同じく新体制で巻き返しを狙う中日。昨季は虎が17年ぶりの最下位に転落した中、1ゲーム差で5位となったライバル。与田新監督、伊東新ヘッドコーチに加え、猛虎投手陣の難敵・あの強打者は今…!?2年前まで中日を追いかけた松井美里記者(27)が、アポなし&ガツガツ潜入。キャンプ地・北谷で突撃取材を敢行した。
◇ ◇
沖縄ならではのスコールが降り続く。「雨を連れてきたな」と球団関係者には笑われ、練習試合は早々に中止が決定した。
野手陣の練習を観察。特に気になったのが、4番を担うビシエドだ。仲間から「タンケ(スペイン語で戦車の意)」の愛称で呼ばれ、若手選手と同じように白球を追い、バットを振っていた。驚いたのは午前中の全体メニュー終了後。他の選手が昼食へと向かう中、最後までビシエドだけが練習を続けていた。
たった一人の快音が鳴り続ける。時間にすれば、わずかな時間。それでも懸命にバットを振り込んだ。14日のロッテ戦出場も本人の志願だったという。「少しでも早く試合感覚を戻したくて。早めの実戦?特別なことはない、対戦したかっただけだよ」。チームを鼓舞する姿勢。外国人選手が先頭に立ち、チームをけん引する姿は阪神を含め、なかなかないことだ。与田監督も目を細める。
「野球に取り組む姿勢が、チームの輪を大事にしようとしている。外国人が普段からそうしてくれるというのは、ありがたい」
新体制で向かう巻き返しの一年へ。「今のミスは喜べ」。首脳陣が選手たちに伝えていることだという。これは矢野阪神と通ずるところなのかもしれない。6年連続のBクラスで「担当コーチから、メンタル的に追い込まれてしまっていると聞いてね」。結果を恐れず、野球を楽しめ。与田改革の根幹だ。
3年ぶりに訪れた北谷に、少し驚いた。室内の外からでも選手たちの声が聞こえ、活気が伝わってくる。素直な感想を伝えると、伊東ヘッドコーチは笑った。「活気あるキャンプにするには、手っ取り早いのが声。久しぶりに来て、活気があるって言ってもらえるのはうれしいですね」。
阪神は昨季11勝14敗と負け越した。得点圏打率・350とチャンスに強いビシエドには、手痛い一打を浴びた。変わろうとしている新体制、そんな中に助っ人たちの変わらない真面目さがある。阪神が浮上するためには、4番のバットを封じなければならない。