糸井特大弾でスミ1星もぎとった!リプレー検証も判定通りのHR 353日ぶり単独首位
「阪神1-0ヤクルト」(30日、京セラドーム大阪)
早くも超人パワー全開だ!阪神の糸井嘉男外野手(37)がチーム1号となる決勝弾を右翼5階席にたたき込んだ。初回の第1打席に右翼ポール際へ打ち込むと、リプレー検証となったが、当初の判定通り本塁打。このベテランの一振りで奪った1点を虎投手陣が守り切り、チームは開幕2連勝。昨年4月以来となる単独首位に立った。
両手を胸に当てた糸井は、「ドキドキ」させながら輪に加わった。打ち終わってから3分。リプレー検証後の判定にベンチは沸いた。右翼ポールのわずか左。5階席に飛び込む特大1号が、文句なし値千金の決勝弾だ。
初回だ。簡単に2死を取られた直後の打席。石川の初球を狙った。103キロのカーブは、ゆっくりとスタンドに消えた。「ビデオ判定になるのは分かっていました。入ってくれてよかったです!!」。今季のチーム1号。矢野監督は両手で拝みながら待った。2人、約束の1本でもある。
「ヨシオも本気を出したら、4割、50本、50盗塁できるよな?」
「ハイ、いけます」
1月31日。糸井はまだ、失意の底にいた。FA移籍して2年目の昨季、チームは最下位の屈辱を味わう。「男にする」と誓った恩師・金本監督が退任。車を走らせ、謝罪に向かったほどだ。そんな中、迎えたキャンプイン前のミーティング。矢野監督は「人間の可能性」について語った。
「人間は本来、持っている力の3割しか発揮できていない。それを4割、5割にしていくのは自分たち次第だ。なあ、ヨシオ」
素直に心の高ぶりを感じた。「やってやろうと思ったよ」。さらに続く指揮官の言葉には、原点を思い出した。「若い子はチームのためにとか思わなくていいって。蹴落とすくらいで勝負しろ、と。俺たちも若いころ、そうだった。自信だけはあった」。投手から野手へコンバートとなった2006年、日本ハムの外野は稲葉、新庄、坪井、森本。12球団屈指の顔ぶれだ。
負ける気はしなかったが、忘れられない試合もある。同年5月14日の2軍ヤクルト戦(戸田)。野手としてのデビュー戦は5打数1安打、3三振だ。鎌田のスライダーに手が出なかった。
「ヒットも三塁前のボテボテ。これ、どうやって打つん…って」
1日、1箱約200球のカゴ10箱以上は打った。両手のマメがつぶれ、汁が出る。固まってバットが離れない。「手を開くと握れなくなるから、ずっとバットを持ってたよ」。夜、つぶれたマメを火であぶって固めた。朝、またバットを握る。そんな日々だった。「超人」のフレーズは、人並み外れた練習量で得た形容詞だ。
スミ1で奪った連勝。まだ2試合だが、昨年4月11日以来の単独首位だ。「皆、優勝を目指して頑張っています」。お立ち台から14年ぶりの頂点を約束した。FA移籍3年目。勝利への渇望が背中を支える。指揮官の思いに応えるため、目指すのは究極の数字。開幕2戦目の決勝弾は、始まりの1本にすぎない。