ドラ3木浪プロ初安打 3連敗がなんや!戦いはこれから打ァ
「阪神4-9中日」(12日、甲子園球場)
渾身のガッツポーズに思いが凝縮されていた。阪神ドラフト3位の木浪聖也内野手(24)=ホンダ=が七回、代打でプロ初安打となる中前打。オープン戦で球団新人最多となる22安打を放っていたルーキーから、通算18打席目に生まれた記念の一本。
白球が中堅の芝生で跳ねる。その一瞬、時が止まったような気がした。「H」ランプがともると、最高の笑顔が光る。木浪が待望のプロ初安打。「積極的に。オープン戦のよかったときを思い出しました」。両手を突き上げた。
2日の巨人戦を最後に、先発オーダーに「木浪聖也」の名前は記されていない。なかなか安打が打てない…。「ずっと苦しかったですから」。悔しい思いをし続けた17回の打席。開幕から13試合目にして、待望の瞬間が訪れた。
そんなルーキーイヤーの幕開けは、大吉からのスタートだった。プロ入りが決まり、故郷の青森市諏訪神社で野球選手として初めての初詣に行った。1年間ケガなくプレーができますように-。活躍を誓い、引いたおみくじにもその背中を押されたような気がした。「いいスタートが切れそう」。それでも現実は甘くなかった。
苦しかった。オープン戦では球団新人最多安打を更新する22本の安打を鳴らし続け、開幕スタメンの座をつかみ取った。それでもここから、初めてプロの壁にぶち当たる。打てども、打てども凡打の山。感じたことのない重圧を感じ、笑顔は消えていった。
「全然違いました。でも、やるしかないですよね」。6日の広島遠征時には矢野監督と初めて食事の席に着き、励ましの言葉をもらったという。9日からの甲子園開幕カードでは2軍戦にも出場。親子ゲームで朝から夜まで白球を追い続けた。
全てはこの瞬間のために。七回だった。カウント1-1からの3球目。136キロの直球を狙った。打球は中前へ。その行方を見届けると、3度手をたたいた。待望のプロ初安打を放つと、その後三塁に進塁。暴投の間に、ホームを駆け抜けた。1死から生まれた木浪の記念の安打を皮切りに、この回一挙3得点。反撃ムードを押し上げた。
開幕から2週間かかった時間。長かったのか、短かったのか。「うーん…いい勉強になりましたね」。記念のボールはすぐさま手元へ届いた。「両親に渡したいですね」。チャンスをつかみきる。午後9時38分に試合終了。その足は、再び練習場へと向かった。