【狩野目線】懐の深さで切り抜けた球児と梅野

 デイリースポーツ評論家の狩野恵輔氏(36)が独自の視点でプレーを分析する「狩野目線」-。今回は3日・DeNA戦で同点の九回2死満塁のピンチを脱した藤川球児投手(38)と梅野隆太郎捕手(27)の配球に迫ります。代打・佐野を簡単に追い込みながらも、勝負の1球までカウントを最大限に使ったバッテリー。狩野氏が注目したのは、押し出し四球も視野に入る中で見せた“懐の深さ”だった。

  ◇  ◇

 バッテリーが考え抜いた末の選択だったと思います。3日のDeNA戦、九回2死満塁で代打・佐野選手を迎えた場面でした。2球で2ストライクと追い込みましたが、ファウルを挟んでから続けたフォークに手を出してもらえない。しかも外角低めの最高のコースを見極められて、平行カウントになってしまいました。

 6球目、藤川投手と梅野捕手からすればストレートに切り替えるタイミングではあったと思いますが、選択したボールは3球連続のフォーク。これが外角に外れてフルカウントとなります。ただバックネット裏から見ていて、この1球が打者に与えた影響は非常に大きかった。

 佐野選手は2-2から明らかにストレートのタイミングで待っていた。ここでフォークが来たことで「フルカウントからでもフォークがあるのでは」と脳裏の片隅に置いたと思います。7球目、真ん中高めの148キロストレートに差し込まれての中飛。ピンチを脱して、延長十回のサヨナラ勝ちにつながりました。

 ほんのわずかな差ですが、相手に“意識させるか否か”は大きな違いとなって結果に表れてきます。自分も現役時代、福原投手とバッテリーを組んだ時にその差を実感しました。ある打者に直球とフォークを続けて、最後の決め球に選択したのは緩いカーブ。意外な一球でしたが、打者は面食らったような反応を見せてバットが出ず、見逃し三振でピンチを脱しました。

 あの時、直球とフォークで攻め続けたからこそ、バッターにはカーブという選択肢がなかったのだと思います。だから佐野選手の場面も、ほぼ直球勝負と分かっていても、3球連続でフォークを続けたことにより「4球連続があるかもしれない」と意識付けさせることができた。頭の中で消そうと思っても消せなかったことで、わずかにタイミングを遅らせることができた。

 それと同時にバッテリーは“鉄則”も守っていました。ホームゲームで後攻の場合、最も避けなければならないのが終盤の大量失点です。仮にタイガースが先攻で1点でも奪われたらサヨナラ負けという状況であれば配球も違ってきますが、この状況はフルカウントにしてもいい。打順が下位に進む中で最悪、押し出し四球でも1点でしのげればいいという勝負をしました。

 試合を分ける場面だからこそ慎重に-。ルール上、決められたカウントを目いっぱい使うつもりで、一球、一球を重ねて行きました。焦って勝負に行かなかったバッテリーの“懐の深さ”が、ピンチを脱し、大きな1勝につながったと思います。

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