高山、球団史上初のサヨナラG倒満弾!甲子園巨人戦連敗9で止めた

 延長12回、サヨナラ満塁弾を放ち、バットを放り投げる高山(中央)。右奥は喜びを爆発させる矢野監督
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 「阪神8-4巨人」(29日、甲子園球場)

 劇的な幕切れだ。阪神・高山俊外野手(26)が同点の延長十二回1死満塁から、右越えに自身初のサヨナラ本塁打となる1号満塁弾。本拠地での巨人戦の連敗を「9」で止めると同時に、2位浮上を導いた。巨人戦のサヨナラ満塁弾は球団史上初で、貯金は今季最多の「5」。3年前の新人王が鮮やかによみがえった。

 最高の笑顔があった。ホームで待ち受ける仲間の元へ。足取りは、三塁を回ると自然と加速した。待ち受ける手荒い祝福に、高山が倒れ込む。何度も背中をたたかれ、顔を上げると矢野監督がいた。ベタベタの体で、思わず抱きついた。笑顔が生んだ劇的な勝利となった。

 “笑え、笑えよ-笑顔がヒットを呼ぶぞ”

 開幕して5日目だった。2軍降格となる前日。清水ヘッドコーチにこう、言葉をかけられたという。それまで4打席無安打。1打席しかない出番に強い気持ちで臨んだが、快音はついてこなかった。募る焦り、危機感。次第に曇っていく表情に問いかけられた。

 2軍で結果を残し続け、4月30日に再昇格。そして1カ月後のこの日、ついに努力が劇弾を導いた。延長十二回1死満塁で、この日最初で最後の打席を迎えた。植田に代わって「代打・高山」がコールされる。植田には直前に「頑張ってください」と声をかけられていた。仲間の思いも背負って-。高山はバットを強く握った。

 球場全体には、勝利を待ちわびる黄色の風船が揺れる。2球続けてボール。その3球目だった。フルスイングで捉えると、右拳を突き上げた。感触は十分。今季初打点が、人生初めてのサヨナラ弾となった。それも満塁弾だ。

 「打ったのが、自分じゃないような気がして…。ゆっくり周りを見ている余裕はなかったです」

 この日の午前中、高山は鳴尾浜にいた。「なかなかチャンスも減ってきたので」と危機感は募っていた。志願した2軍戦との親子ゲーム。甲子園に到着したのは、試合開始直前だった。「今年にかける思いは強かったです」。昨年の暮れ。球団納会が終わり、バスが鳴尾浜へ到着すると、高山はすぐさま室内練習場へ向かい、一人で黙々と打ち込んだ。今年にかける思いが、高山の行動、姿勢を変えた。

 巨人戦でのサヨナラ満塁弾は、球団史上初の快挙。そして甲子園での巨人戦連敗を「9」で止め、チームは2位浮上だ。「今日という1日をきっかけにしてやっていければいい」。一振りで変えた。お立ち台から見た景色に、高山はまた笑った。

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