能見 衰えなし!史上2人目40代で50戦登板 父譲りポーカーフェースで鉄腕新伝説
「中日3-0阪神」(14日、ナゴヤドーム)
屈辱的な敗戦の試合後、阪神の能見は淡々と偉業を振り返った。節目の登板。三者凡退で役目を終え、逆転勝利の望みをつないだ。「いいよ。オレのことはどうでもいいから」。達成感より敗北の虚無感が胸中を占める。ただ、40歳以上の50試合登板は、43歳シーズンで達成した2017年の岩瀬(中日)以来、史上2人目の偉業となった。
「一緒にしたら失礼でしょ」。最後まで感慨に浸ることはない。ただ、マウンド上では圧巻だ。負けられない戦いが続く中、3点差で迎えた七回に登板。まずは大野雄に全球ストレート勝負。最後は142キロで見逃し三振に斬った。続く大島は宝刀フォークで二ゴロに。京田は3球全て同球で一ゴロに抑えた。
勢い付く竜打線を10球で料理。相手に傾いていた流れを断った。中日には今季、無失点。登板4試合連続0封と終盤戦で輝きを増す。シーズン途中、中継ぎに転向した昨季は、45試合の登板。40歳になった今季、昨年を上回る50試合到達は、不惑にして衰えのない姿を証明する。「40(歳)じゃないかもしれない」。年齢について問われた左腕は、いたずらに笑みを浮かべた。
投手最年長になった今、両肩に背負うものは増えた。前回のリーグ優勝は、入団初年度の05年までさかのぼる。この年、4勝を挙げたが、達成感はなかった。「優勝したいよ」。年々、思い募る中、今年4月だ。闘病生活を送っていた父・謙次さんが息を引き取った。68歳の若さだった。
「弱い姿を一切、見せないオヤジだった。我慢してね。そういう人だった」。父は少年野球チームの監督を務めた。幼少期から2人の間には白球で結ばれた絆があった。マウンド上で貫くポーカーフェースは、最後まで強く生きた父の姿に重なる。「元気で投げられているのが一番ね」。まだ、戦う。勝つために、投手最年長としてチームを鼓舞していく。