近本 ミスター超えセ界一!新人最多154安打 61年ぶりの偉業達成
「阪神0-8ヤクルト」(19日、甲子園球場)
歴史の重い扉をこじ開けた。阪神のドラフト1位ルーキー・近本光司外野手(24)がヤクルト戦の初回に右前打を放ち、1958年に長嶋茂雄(巨人)が作ったセ・リーグ新人安打記録を61年ぶりに塗り替えた。137試合目での偉業達成に、一塁塁上で記念ボードを持ち誇らしげな表情を浮かべた近本。チームは今季14度目の完封負けで5位に転落したが、メモリアルな一打に甲子園は沸いた。
地道な積み重ねが、大記録を樹立させた。初回、60年以上破られなかった扉を突破した瞬間、聖地に歓声とどよめきが響き渡った。ビジョンに映ったセ・リーグ新人最多安打記録となる通算154安打の文字。近本が1958年に長嶋茂雄(巨人)が残した偉大な数字を塗り替えた。
新記録に王手をかけ、プロ初の3番で迎えた一回の第1打席。小川が投じたカウント1-1からの3球目、116キロカーブを鋭く振り抜いた。痛烈なゴロとなった打球は一、二塁間を破り右前へ。「パネルを受け取った時に、少しだけ実感が湧きました」と、一塁ベース上で新記録達成パネルを掲げる近本の顔に安ど感がにじんだ。
偉業達成を果たした近本にとって人生の分岐点となったのは、投手から野手に転向した大学2年時。「ケガをしていましたし、試合でも投げていなかった。このまま続けていても面白くないと思ったので野手に転向しようと。時間があれば、木製バットに慣れるためにとにかくバットを振っていました。考えて野球をするようになったのも野手になってから」とピッチャーへの未練を断ち、野球と真剣に向き合った。
何とか試合に出たい-。そのために何が必要なのかを知るために、何冊も本を読んだ。最も影響を与えてくれた文献は「ジョコビッチの生まれ変わる食事」。神経の反応や体のキレを出すため、小麦などグルテンを含む食品をやめるという食事法が記されていた。
“グルテンフリー”を取り入れてみたものの…効果は感じられず、自らの体に合わなかった。そんな失敗の経験があったからこそ、気づくことができた自分らしさ。「自分には自分に合った、食事や睡眠、トレーニング方法がある。打ち方も自分には自分の打ち方があるんだ。そう気づかせてくれたのがこの一冊でした。これからは自分の個性を伸ばしていこうと思いました」と考え方を変えたことが、今につながる。
レギュラーシーズンも残り6試合。「まだCSの可能性があるので、残りの試合を勝ってつなげたい」。飽くなき向上心を持ち続ける近本の戦いは、まだまだ終わらない。