藤井バッテリーコーチ「その言葉が本当に嬉しかった」 ~ランディに送る手紙~
「阪神6-3中日」(29日、甲子園球場)
阪神のランディ・メッセンジャー投手(38)が、甲子園で行われた中日戦で引退試合に臨んだ。先発マウンドに立ち、大島に対してオール直球勝負を挑んで日本通算1475個目の三振を奪った右腕。試合後のセレモニーではファンの大歓声をバックに愛したタテジマのユニホームに別れを告げた背番号54。ありがとう、メッセ!!その雄姿は絶対に、忘れない。
◇ ◇
ランディへ
引退すると聞いた時、うそやろ、まだ投げられるやろ!?お疲れ様という気持ちもあるけれど、正直まだまだできるんじゃないかと思った。ランディ自身が納得して、決心したことならそれが一番。
悔いはないとか、よく言うけれど、そんな事はあるはずがない。
好きな野球を辞めると決めたこと、それは人生の多くの時間を野球に費やしてきた同士だからこそ分かる。
2011年。なんでこんなにいい球が投げられるのに勝てないのか?それが初めて会った印象だった。阪神で98勝。ランディが投げる日は、特に勝たなければいけないと思っていた。思い出すのはハイタッチや、ベンチで配球について語り合ったこと。
「ランディの球ならこうじゃないか?」
「ナイスアイデア!」
一方通行じゃなく、打者を抑えるために一試合、一試合、お互い必死やったな。
横浜でメシを食いに行って、ウチの投手陣のことをメッチャ見ていた事にはびっくりしたよ。「しっかり鍛えて、もっと練習すれば、あいつはメッチャよくなるのに」とか。キャンプで投内連係も一切気を抜く姿は見たことが無かったし。ランディ自身が努力を重ねてきたから、周りがよく見えているんだろうな。痛い、かゆいを口にせず、ぶれない心の強さは尊敬しているし、これからもどんなことにも大切な姿勢だと思う。
思い返すとクライマックス、日本シリーズでも一番、活躍してくれて、日本一になられへんかったけど、ほんまに日本一のピッチャーやった。
ランディとバッテリーを組む事が出来て俺は幸せだったし、一緒に野球が出来たことを心から誇りに思っています。
俺が引退した2015年。ユニホームを脱ぐことは、忍とトリには伝えていたが、ランディも気付きながら、最後まで知らないふりをして、全力で投げてくれた。
「俺の気持ちを分かって、サインを出してくれてありがとう」
その言葉が本当に嬉しかった。
自分勝手なところもあったけど(笑)。十分に言葉も思いも伝わらない日本で、母国から離れた生活は、決して楽ではなかっただろうし、気苦労も少なくなかったと思う。
なにより家族を一番大切にするランディを知っているから、ほんまによくやっていたなと、やっぱり尊敬と感謝しかない。
俺のサインで打たれたことも、沢山あったな。ごめんなさい。
まだまだ伝えたい事はあるけれど、まずは本当にありがとう。そして10年間、お疲れさまでした。
阪神タイガース 藤井彰人