矢野虎、大逆転CS進出 安藤監督以来37年ぶり就任1年目Aクラス
「阪神3-0中日」(30日、甲子園球場)
夢じゃない。思い描いた奇跡的な展開が現実となった。ベンチから選手が飛び出し、スタッフは歓喜。グラウンドに出ると、ファンの笑顔、涙が目に飛び込む。何よりもその姿がうれしかった。シーズン最終戦で決めた逆転CS進出。阪神・矢野監督の表情には興奮よりも、安堵(あんど)が広がった。
「いろんな感情が入っていて、ひと言でなかなか言い表せない。苦しんだからこそ価値があるのかな」
序盤は均衡した展開が続いた。しかし、四回1死で、前回ノーヒットノーランを許した大野雄が最優秀防御率を確定させて降板。甲子園に大歓声が響き渡ると、潮目が変わった。
四回に大山の適時打などで2点を先制し、先発・青柳は攻めて5回無失点。3点差に広げた後は、引退する高橋聡を七回にマウンドに立たせ、鳥谷も遊撃へ送った。1敗すれば終戦の土俵際から今季最長の6連勝。最後も全員野球だった。
「やっぱり気持ちだと思う。横田のことも目の当たりにして。野球やれる幸せっていうかね。それを確認して、みんなの気持ちをつなげた。だから、しんどいけど勝ち切れた」
新監督の1年目でのAクラス入りは球団では82年・安藤監督以来、37年ぶり。矢野監督は就任1年目から前面に色を出した。監督と選手の垣根を取っ払うように、自ら動いて意思疎通を図った。春季キャンプでは大半の選手と食事の場を設け、自身の考えや方針を伝えた。
シーズンでは、一般的にヘッドコーチらが行う2軍降格の通達を自ら行った。福留が両ふくらはぎ痛で2度目の2軍調整となった際にも歩み寄った。「俺が無理をさせてしまった。申し訳ない」。若手、ベテランも関係ない。同じ目標を目指す仲間として向き合い、作り上げてきた一体感が最後に結実した。
試合後のセレモニーではファンにあいさつし、ポストシーズンでの奮闘を約束。ファーストステージ初戦、5日・DeNA戦からは日本一を目指す戦いが始まる。「俺らは守りに入るチームじゃない。最後まで攻めながら、もう1回、甲子園に帰ってきて戦えたら」。今季培った自信を胸に、新たな戦いに挑む。