球児 炎のまたぎ!2回0封締めでファーストS突破 5年ぶりファイナルS進出
「セCSファーストS・第3戦、DeNA1-2阪神」(7日、横浜スタジアム)
阪神・藤川球児投手(39)が1点を勝ち越した直後の八回から、シーズンでも1度しかなかった回またぎで、炎の2回無安打零封。気迫満点の投球でチームを5年ぶりのCSファイナルS進出に導いた。9日から始まる同Sでは、宿敵・巨人と敵地・東京ドームで戦う。
握りしめたバトンに、仲間の血と汗を感じた。降りしきる雨に表情をゆがめながら、藤川の表情が最後の最後で満面の笑みに変わった。託された使命が重ければ重いほど、この男が頼りになる。藤川が2イニングを無失点に抑える堂々たる救援。猛虎に“東京行き切符”をもたらした。
このリードは絶対に譲れなかった。出番は八回。「ピッチャー・藤川」のコールに球場が沸く。八回表が終わって1点リード。相手の不気味な反撃が、宝物のような1勝をのみ込もうとしていた。そんなラスト2イニングのマウンドに、守護神が仁王立ちした。
切れ味鋭い速球が、雨粒を砕く。雨の中、声援を送ってくれた虎党に勝利で報いたかった。とめどなく降る雨が指先を狂わせ、着地する左足を滑らせる。ワンバウンドの球に時折苦笑いを浮かべ、両手で白球を何度もこねた。八回を三者凡退に片付け、九回は先頭の筒香を142キロ直球で空振り三振。しかし続くロペスに四球を与え、球場の雰囲気が変わり始めた。
マウンドに土が入れられ、打席に宮崎。「タイガースファンのこともあるし、監督、コーチ、スタッフを東京に連れて行きたいと思っていた」とチームに携わる全ての人の思いを右肩に宿した。一球で白星が黒星となる過酷な仕事場。だが、期待は裏切らない。
一飛に仕留めて2死を奪うと、最後は代打・乙坂の打球を自ら処理して試合終了。女房役の梅野とド派手なガッツポーズ。大の大人が少年のように喜びを表現する。その光景が、勝利の格別さを物語っていた。
シーズンでは6月9日の日本ハム戦で2イニングを投げたのが1度あるだけ。シーズン終盤、奇跡の6連勝から始まった夢へと続く道のりは、まだ終わらせない。「今日終わってしまわないようにと。せっかく楽しいシーズンなので。最後まで行けたらいいですね」。守護神は試合後、勝利の余韻を吸い込みながらチームとファンの思いを代弁した。
全員で手にした宿敵・巨人への挑戦権。セ界の覇者は難敵だが、虎にはこの男がいる。