【矢野阪神V逸の影と逆襲への光1】先発3本柱前半伸び悩みも…若手が台頭

 矢野阪神は最終盤の感動すら覚える驚異の戦いぶりにより、貯金1の3位で2019年シーズンを終えた。就任1年目からAクラスを確保したとはいえ、浮き沈みの激しいシーズンだった。今季の問題点や課題を整理し、来季への希望も含め、5回にわたって連載で検証する。

  ◇  ◇

 オリックスで昨季10勝の西、中日で同13勝のガルシア。ともにチーム最多の勝ち星を挙げた2人の加入で先発陣の厚みが増した。だが、球宴までの前半戦で西が3勝7敗、ガルシアは2勝4敗。開幕投手を務めたメッセンジャーも3勝7敗と“先発3本柱”の勝ち星が伸び悩んだ。

 昨季後半からの内容を振り返っても、メッセンジャーは球威の衰えを隠せなかった。西は明らかに打線の援護に恵まれなかった試合が多かったが、一方で15試合続けて先制点を許していたという事実もあった。

 最も深刻だったのがガルシアだ。最終盤に中継ぎとして3勝を挙げたものの、6月2日・広島戦での2勝目を最後に12試合、約3カ月半も勝ち星から遠ざかった。その内容はある時期から同じパターンの繰り返しだった。序盤は無難に抑えるも、勝利投手の権利まであと1イニング、時にはあと1人から崩れていく。ある球団関係者は「勝ち星を意識するあまり、明らかに投球に焦りが出てしまっていた」と指摘した。

 一方で明るい材料は1年間ローテを守った青柳、高橋遥の存在だ。確かに高橋遥は3勝9敗に終わった。だが、金村投手コーチは断言する。「初めて1シーズンを投げ切った経験は大きい。後半は明らかにバテていたけど、最後までローテを任せたのはその経験をさせるため。来季以降に必ずつながっていく」

 これはキャリアハイの9勝(9敗)を挙げた青柳にも同じことが言える。「梅野との意思疎通が深まった」こともあり、後半戦7勝1敗と実力通りに活躍した西も、来季は開幕投手の筆頭候補として序盤からフル回転が求められる。そして、今季はケガなどに泣いた才木や小野、秋山、岩貞、また才能豊かな望月、浜地らの台頭も期待される。

 中継ぎ陣に関しては明るい材料しか見当たらなかったほどだ。桑原や高橋聡をケガで欠く誤算はあったが、それを補って余りある活躍を島本、岩崎、守屋といった面々、そして大当たりの助っ人ジョンソンが見せた。彼らの年齢などを考慮しても、12球団唯一の2点台となる防御率2・70を誇った救援陣は来季も計算ができる。

 さらに忘れてはいけないのが藤川だ。「球児は自ら2軍行きを申し出て、そこで心身を整え直したのだろう。その後の投球は見違えた」と球団関係者。1試合2被弾を喫した4月6日・広島戦後に2軍で再調整。特にドリスに代わり、守護神に戻ってからは全盛期に劣らぬ投球を見せた。

 そして、投手陣において「大きな誤算の一つ」と関係者が声をそろえるのが、1軍でわずか1試合の登板で、プロ7年目にして初の未勝利に終わった藤浪だ。この男が完全復活を遂げることができれば、来季の“打倒巨人”も絵空事ではなくなってくる。

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