原口が“教科書”に採用!奇跡復活が中学母校の道徳資料に 校長発案で自主制作
大腸がん手術から復帰した阪神・原口文仁捕手(27)の足跡が、道徳の“教科書”に採用されたことが26日、分かった。母校の埼玉・寄居町立城南中学が「前だけを向いて ~原口文仁 癌を乗り越えて~」という道徳資料を制作。在校生には全クラス、教材として使用した。同校ではOBを教材にするのは初。来年度以降に入学する生徒も、同様の授業を受けていくという。
埼玉県北西部にある寄居町。原口は18歳でプロ入りするまで、荒川の流れる緑豊かな町で育った。阪神入団後は腰痛、肩痛などで育成契約も経験。その後はシンデレラストーリーを歩み、1軍に定着したが、今年1月に大腸がんを公表。手術を経て、復活後の奇跡な軌跡は記憶に新しい。
不屈な男の野球人生は、地元の子どもたちの希望にもなる。母校・寄居町立城南中学では、関根光男校長(58)の発案で“教科書”になった。今年度から全国的に教科として指定される道徳の授業。題材として、同校が「前だけを向いて ~原口文仁 癌を乗り越えて」を自主制作した。
「すごいことですよね、本当に。マネできない。6月の全校朝会でも話したんです。原口選手のことを。教材としてはもう、この学校で過ごした先輩なので。こんな身近で訴えるものはないか、と」
文科省が定める指導要録としてA~Dまである項目の中、Aの「希望・勇気、克己と強い意志」に該当すると判断。道徳主任教師の木村洋介教諭(28)が、教材と指導カリキュラムを作成した。8クラス、全156人の生徒は既に1時間の授業を受け「自分の母校にそんな偉大な人がいると、純粋な子どもたちの感想がありました」(木村教諭)という。
過去の道徳教科書では王貞治氏、故星野仙一氏ら複数の題材が取り上げられているが、現役選手の登場は希少。世界的知名度を持つイチロー氏が英語教科書に登場した例や、国内の現役選手では藤川球児投手が、小学6年の道徳教科書に採用されている。現時点で原口の教材は母校限定だが、同校長は「来年以降も使っていく予定です。新入生たちにも授業としてね」と続けた。
同校では今月22日、原口を招いて特別授業を行った。当日は日曜日だったが、教育委員会に届け出て休日を変更。講演、質疑応答など実り多い時間になった。「こうやって頑張っていることが多くの人に、何かを起こす原動力になればそれはありがたいことですね。でも、これからです!!」。まだ夢の途中だ。使命を持って戦うプロ野球人生。“原口先生”は歩みを止めない。