【阪神・矢野監督&今中慎二氏対談2】五輪中断の今年は前期、後期制のイメージ
阪神・矢野燿大監督(51)が中日時代にバッテリーを組んだ今中慎二氏(48)と現役引退後に初めて対談し、『エース』について語り合った。タテジマの正捕手だった指揮官が描くエース像。93年に17勝を挙げて沢村賞を獲得した左腕が唱えるエース道。現在も公私で親交の深い両者の熱いトークをたっぷりとどうぞ。
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今中「左のエース候補が高橋なら、右だと藤浪?」
矢野「晋太郎に関してはよく聞かれるし、オレも晋太郎には期待してるし、頑張ってほしいとは思ってるけど、あんまり数字的な要求、要望ってのは持ってなくて。晋太郎自身が苦しいところまでいったんで、アイツ自身が自分のピッチングができるってことが一番いいのかなって。勝ってくれたら言うことないんだけど。そういう目線でオレは見てるんだけどね」
今中「それでも、阪神ファンや世の中の人は藤浪の復活を期待してる人が多い。僕も本人と話をしたんですけど、これまではなにか考えすぎて、バッターと勝負するんじゃなくて、自分で自分と戦ってるような感じで。でも今年は変わってきた感じを受けた」
矢野「うん、変わってきたね。表情もちゃうし。投球練習でも躍動感出てるしね。いい顔で投げてるし、本人も手応えがあるからそうなってると思うし。まあゲーム行けばどうしても力むんだけど、その中でどう修正していくかっていうところまではしっかり来られたから。どんどん実戦の中で使っていきたいなという楽しみは出てきたね」
今中「今の野球はブルペン勝負みたいな要素が増えましたが、ジョンソン、ドリスが抜けた中継ぎ陣はどうです?」
矢野「抑えは球児(藤川)と決めてて、その前をエドワーズ、スアレスのどっちかで競争。岩崎は(打者の)右左関係なくいけるし、1イニングしっかり任せられるんで、そこら辺が中心になるかなって」
今中「藤川につなぐまでのところで、若手の新しいパワーピッチャーの台頭が欲しい」
矢野「そこは望月が先発から外れた場合に入れていく形になるのかな、現状は」
(続けて)
「普通でいけば外国人選手は(投手、野手で)2対2になるやん。この2をどうするかだよね。(先発候補の)ガンケルとガルシアが良くないんであれば、後ろはスアレスとエドワーズってのもありやと思うし。先発で投げた後に抹消して、また追加もできるから。今年に関しては(外国人選手を)多く獲ってもらったから、やりくりで言えばカードが増えた状態になったんで、そういうのも頭にあんねんけど」
今中「去年は投手3、野手1という感じだった」
矢野「バリエーションが増えたんで、オレがどう使うかというのがいい悩みで」
今中「今年はシーズン中に東京五輪を挟む異例の形」
矢野「昔、パ・リーグが前期、後期制だったでしょ。あのイメージやねん。まず(東京五輪中断期間までの)100試合を取りにいく。1カ月休めるから、去年のもう負けられへんっていう後半にピッチャーをどんどん代えていったように思い切って使っていってね。1カ月休んで、残りの43試合をもう一回繰り返してね。選手の負担は大きいけど、それはオレのやりくりの仕方やねんけどね。143試合って考えると、1カ月のブレークは空きすぎやなって思うねんけど、前期やって休むやつはしっかり休養して、よし後半また行こかっていうふうにできたらいいなっていうのが、オレの頭の中の理想かな」
今中「ピッチャーだとオールスター前は勝ててたのに、オールスターを挟んでから途端に勝てなくなるピッチャーがいる。オールスターなんてあんなに短い期間なのに。それが1カ月となると、その間に何かやらないととか考えてたりする部分はあるんですか」
矢野「そこはオレらの大きな仕事のところで、選手をいい意味で休養させながら、目指すところにしっかり(状態を)持っていってもらうっていうのは、オレも好きなとこなんで。気持ちを上げるってのはオレひとりだけではできないんだけど、そこはやっていけるんちゃうかなって思ってる。ちょっと今までの戦い方とは違う形になるのかなと。でも、それはそれで面白いと思うし」
今中「去年1年を振り返ってみて、五回途中での先発投手の交代ってなかなかできなくないですか?」
矢野「やりにくいよな。厳しさの愛情っていうかさ、育て!っていう意味の投手交代ってのはあると思うんだけど。4回2/3か、5回を投げきるのか。投げきった結果、負け投手になっても、それはそれで責任負って次に頑張りよるからね。でも、そこで代えてやられた場合は、なんやねん!オレに投げさせろやっていう意見がピッチャーサイドにはあるはずなんよね。次の登板にも影響すんのよ。そこはオレもキャッチャーやから、その気持ちは采配振ってる時も思ってるのよ。代えるってのは、厳しさの中に愛情がないと伝わりにくいんちゃうかな」
今中「でも、若いピッチャーを育てるなら我慢ですよね」
矢野「そうそう。責任を負わせるところまではいかせたいから、だからイニング途中は代えにくい。投手交代ってホンマに難しいよね。セ・リーグは打順の絡みもあるからさ」