【名勝負列伝 2】桧山進次郎氏 生涯最高のスイング!現役最終打席で代打弾!
今年、球団創設85周年を迎えた阪神タイガースの球団史を彩る名勝負を、当時のデイリースポーツ紙面と共に振り返る新企画「球団創設85周年 名勝負列伝」。第2回は桧山進次郎氏。2013年10月13日のCSファーストS・広島戦(甲子園)での「桧山、現役最終打席で本塁打」を取り上げる。
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桧山の現役最終打席は打者として最高の誉れだった。CSファーストS第2戦。5点ビハインドの九回にその時を迎えた。マートンが2死から執念の右前打でつなぎ、巡ってきた22年間の集大成を披露する場面。「代打の神様」はネクストからゆっくりと打席へ向かった。
スタンドから拍手と声援が注がれる中、マウンドのミコライオと対峙(たいじ)。1ボールからの2球目、154キロ直球に自然と体が反応し、虎党の待つ右翼席へ感謝と共に打球を届けた。44歳3カ月での一撃はポストシーズン最年長本塁打記録となった。
この5日前、迫り来る現役引退へのカウントダウンが続く中、目の前で最高のラストを飾った選手がいた。それは、同じく13年限りで引退を表明していたDeNAの小池。現役最後の試合で最終打席を含む2本の本塁打を記録し、グラウンドを去った。「野球の神様っているもんやなと思った」と実感した桧山。その後“神様”は自身にも宿った。
翌日のデイリースポーツは「桧山 最後の神弾」の見出しで1面に掲載されていた…一時は。「あまりにいい打ち方で自分でもビックリで。僕にも野球の神様がいるのかなと思った」という当時のコメントが示すように、生涯最高のスイングだった。
しかしその華々しい最後の裏側で、“大事件”が起こっていた。夜が更けようとした時、「掛布阪神復帰」の一報が入った。当時の担当デスクは「そこからはバタバタ」と振り返りつつ、「ファンが最も待ち望んでいたともいえる生え抜きのOBだけに、報道する側としても、一野球ファンとしてもうれしいニュースだった」。最終版で「桧山 最後の神弾」の1面は「掛布氏 阪神復帰へ」に差し替わった。
桧山の劇的な幕切れは、大ニュースに1面を“奪取”された。それでも代打の神様が見せた最後の一振りは、虎党の脳裏に今でも深く刻まれている。