【岡田彰布氏の眼】当たり前のことができない阪神
「巨人8-0阪神」(19日、東京ドーム)
こういう一方的な試合展開になった要因は、初回の守備にあったと感じる。阪神は1死一塁で、打席には巨人・ウィーラー、一塁走者は足の速い松原。カウント1-2から、ランエンドヒットなどいろんな状況が考えられた場面だ。ここで松原がスタートを切り、二塁ベースカバーに入ろうとした上本が逆をつかれ、打球は一、二塁間を抜けた。
その結果、1死一、三塁とピンチが広がったが、あの状況で二塁ベースカバーにセカンドが走るのはセオリーではない。ショートが入って打球が三遊間を抜けた場合と比較して、どちらが一、三塁になる危険性が高いだろうか。私も現役時代にセカンドを守ったが、プロ野球でこのようなケースはまず、考えられない。
仮に4番・岡本のようなプルヒッター、何でも引っ張る外国人選手であれば、ショートを定位置に置いてセカンドがベースカバーに向かってもいい。だがウィーラーは違う。追い込まれているだけに、右方向へ打って走者を進めようとか、状況に応じた打撃ができる外国人選手。カウント的にも巨人ベンチが仕掛けてくる可能性は十分に考えられた。
もし上本が定位置であれば、少なくとも一つはアウトを取れていた。そして2死二塁で岡本、丸の2人で1アウトという勝負ができる。1死一、三塁と比較しても無失点で切り抜ける確率は高い。そんなセオリーを無視して喫した2失点が野球を“おかしく”し、巨人に主導権を渡してしまったように思う。
守備隊形に関して、状況を見ながら事前に守備コーチが確認するのは当然のこと。当たり前のことを当たり前にやらないと、やはり試合には勝てない。本当に小さいことかもしれないが、これが大きなプレーにつながり、そして勝敗に直結してしまうことを忘れてはいけない。