阪神・藤浪 原点の地で示した「It’s me」称賛、非難も糧に前へ

 「ヤクルト4-7阪神」(21日、神宮球場)

 神宮のスタンドから、「お帰り」の声が響く。7年前。藤浪のプロ野球人生はここから始まった。栄光を知り、挫折も味わった。称賛も非難も、前に進む糧にした。いつかまた、虹を架ける日を信じていた。「It’s me」でつかんだ692日ぶりの勝利。復帰5戦目、原点の地で再スタートの1勝だ。

 「よく成績が出なくなると、人が離れていくって言う。幸せなことに、僕には応援してくれる人がたくさんいました」。初めて0勝に終わった昨季、野茂英雄氏と食事する機会に恵まれた。「もっと自分のために、野球をやってもいいんじゃないか」。パイオニアの一言が胸に刺さった。

 同じ時期、家に小包が届く。送り主は「ダルビッシュ有」。米大リーグ・カブスに所属する右腕からだ。愛用する「ドライブラインベースボール」の器具とともに、メッセージも添えられていた。「俺の使い古しだけど、良かったら使ってみて」。○○がいいと聞けば日本中どこにでも行った。わらにもすがりたい日々の中、届いた一筋の光でもあった。

 12月。沖縄・北谷で同ベースボールの講習に参加した。投球では「モット、モット!!」の声に乗せられて153キロを計測。そんな解析中にふと、若いスタッフのパソコンに付箋が貼られているのを見た。「It’s me」、直訳で「これが俺だ」。見失い掛けていた心だった。科学的なアプローチによる技術指導。最先端の分析ができる場所で、巡り会ったのは原点の心だ。

 「素直に、いい言葉だと思いました。周りの人にどう思われても、何を言われても、これが俺なんだ。大事なのはブレないこと。自分のことを信じてみようって決めたんです」

 新型コロナウイルス感染から、練習遅刻による2軍降格。涙ながらに一人、一人、謝罪して回った。さらに軽度の右胸筋挫傷で戦線を離脱。どん底の日々の中、信じたのは自分自身。誓ったのは支えてくれた人への恩返しだ。「僕は1軍に上がるだけで喜んでいい投手じゃない。応援してくれる人がいる。勝って初めて喜べるんです」。復活の1勝は、再出発を誓う1勝。原点の地で示した。これが俺だ。これが藤浪だ。(デイリースポーツ・田中政行)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

阪神タイガース最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス