【岡義朗氏の眼】阪神・熊谷に求められる“止まる”勇気と技術

 「阪神3-5DeNA」(10日、甲子園球場)

 私が手元で計測したタイムは1秒27~1秒3。阪神ベンチ内の首脳陣もストップウオッチでタイムを計っていた。八回から登板したエスコバーのクイックモーションは、明らかに盗塁を仕掛けられる遅さだった。

 2点を追う八回、1死から左前打で出塁した熊谷は、次打者・中谷のカウント1-1からの3球目にスタートを切った。これはランエンドヒットの形となり、ファウルで仕切り直し。その後、カウント2-2からの6球目で再び走って刺されたわけだが、この盗塁失敗は痛かった。反撃ムードは沈み、中谷も三振に倒れた。エスコバーのクイックの遅さと熊谷の足を考えれば、悪くても際どいタイミングになるはず。完全なアウトだったということは、スタートが遅かったということだ。

 これが試合序盤だったり、リードした場面であれば75%ぐらいの成功見込みで走ってもいいだろう。しかし劣勢の終盤は失敗が許されない。それでもベンチは熊谷の足にかけた。盗塁に100%の成功はあり得ないが、スタートで遅れたときに止まる勇気と技術があれば「失敗しない」ということは100%を目指せる。熊谷がプロで生きていくためには、そこまでのレベルが求められる。この日のベンチからの期待を忘れてはいけない。

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